映画

細田守監督のアニメ映画について違和感を覚える人がいるのはなぜか

1.はじめに 細田守監督のアニメ映画『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』に関しては、高い評価がある一方で、「違和感がある」「好きになれない」といった意見も、相当数みられます。本稿では、その違和感が何に由来しているのか…

滝を見にいく

沖田修一監督のコメディー映画。 キャッチコピーのように「7人のおばちゃん、山で迷う。」という映画です。 出演する7人のおばちゃんは、「40歳以上・経験問わず」という条件でオーディションをして決めた、プロとアマチュアの混成部隊。有名な映画女優はい…

紙の月

吉田大八監督のサスペンス映画。角田光代の同名小説が原作。 『霧島部活やめるってよ』など、多視点ドラマを得意とする吉田監督ですが、今回は、横領に手を染める女性銀行員に、あえてカメラを固定して、犯行の開始から、蕩尽の日日と露見までを、じっくり、…

トワイライト ささらさや

加納朋子の連作ミステリー『ささらさや』を原作とした映画。 『福福荘の福ちゃん』のほうが、果汁90%くらいの濃密さだったとすれば、この作品は果汁20%くらいの非常に薄い感じでした。このシナリオなら、てきぱきと演出すれば、半分くらいの時間の映画にで…

福福荘の福ちゃん

藤田容介監督のコメディー映画。 森三中の大島美幸が、坊主頭でオッサン役を演じることが話題となった作品ですが、キャラクターの魅力あふれる優しい喜劇になっていました。 大島演じる主人公、福ちゃんは、ぼろアパートに住む30代の塗装工。気は優しくて力…

思い出のマーニー

そのものズバリのネタバレは避けますが、できれば鑑賞後にお読みください。 いわばガール・ミーツ・ガールズの物語でした。生きるのがへたくそな女の子が、特別な女の子と、特別じゃない女の子たち(と元女の子)のネットワークによって、少しだけ自信を取り…

おおかみこどもの雨と雪

2時間を映画に吸い込まれて、気が付くと10年も年をとってしまった気分になる不思議な作品。観客の人生経験を反射して輝きを放つので、老若男女を問わず多種多様の人々に観てもらいたいです。 特筆すべきはエンターテインメントではないこと。これまでの多く…

スタジオジブリにおけるDVD、BDの売上傾向

コクリコ坂から 横浜特別版 (初回限定) [Blu-ray]出版社/メーカー: スタジオジブリ発売日: 2012/06/20メディア: Blu-ray購入: 2人 クリック: 62回この商品を含むブログ (23件) を見る 先日、『コクリコ坂から』のDVD、BDが発売になりました。 DVD、BDの売上…

けいおん!

米澤穂信の『氷菓』を京都アニメーションがアニメ化するということで、その予習も兼ねて観てきました。『氷菓』シリーズのときには、『クドリャフカの順番』か『二人の距離の概算』が劇場版になるのが、ミステリファンとしての理想です。 映画『涼宮ハルヒの…

コクリコ坂から

普通に退屈で、普通に出来の悪いアニメーション。キャラクターも背景もストーリーも音楽も、平板で凡庸でしたが、いい点も多少はありました。 前半は、カットを嫌というほど重ねているのに、ストーリーもキャラクターも全く動かず、どうなることかと思いまし…

脚本コクリコ坂から

2011年7月16日のスタジオジブリ映画『コクリコ坂から』公開を前にして、まだキャラクターデザインすらも発表していないのに、なぜか映画の脚本が発売になると言う理解不能なプロモーションによって、脚本を入手いたしましたので紹介します。 なお、本作の監…

星を追う子ども

新海誠監督の長編アニメーション映画。 少女とオッサンが地下の国を旅して、それに少年がからむという冒険物語。 少年と少女とオッサンに異世界と言えば、誰もがラピュタを想起すると思いますが、それに限らず、宮崎駿映画のモチーフがあちこちに出てきます…

インシテミル

ほめている人がいない映画化。実際あまりほめるところもないのですが。 活きのいい魚のような原作小説から、大骨、小骨をすべて取り去って蒸した料理のようです。本格スピリットや、ミステリ読みが喜ぶキモが、すっかり抜け落ちています。大衆受けを狙ったの…

借りぐらしのアリエッティ

こぢんまりとした原作を、映画化にあたって大幅にスケール「ダウン」して、ほとんど見どころのない駄作ができあがりました。 原作はきちんと面白いのに、映画は全然面白くありません。駄目なのは脚本だけではありませんが、ともかく脚本が駄目です。原作を構…

告白

中島哲也監督の映画。 抑制された色彩、スピーディーな展開、みなぎる緊張感。スキのない傑作です。 原作小説をほぼ忠実に映画化。少年犯罪を描いていますが、ウエットさは控えめで、ドライなエンタテインメントとなっています。 血糊がやや過剰気味なのです…

アニメ映画の興行収入について(サマーウォーズを中心に)

去年の夏に公開された映画『サマーウォーズ』は、興行収入が16億円超と、まずまずのヒットとなりました。この規模のヒットは、非テレビアニメ、非ジブリのアニメ映画としては、かなり異例のことのようです。 このヒットが、他のアニメ映画などと比較して、ど…

第9地区

28年前に地球にやってきて、スラム化した収容所に暮らす難民のような宇宙人たち。粗暴で不潔。周囲の住民との軋轢から、移住計画が進められるが… 宇宙人が同居している現代の日常、というのがまず新鮮です。主人公は、アクション映画に不似合いな小市民。宇…

涼宮ハルヒの消失

原作もテレビアニメも見ていない、予備知識ゼロの状態で見ました。 一言で言うと「ビューティフルドリーマー+ドラえもん−センスオブワンダー」かな。基本のストーリーラインは、ビューティフルドリーマー的なので、入り込みやすく、面白かったです。 ただし…

かいじゅうたちのいるところ

数分で読める絵本を、2時間の映画にする必然性が、きちんとあることに感心しました。絵本では、子供の全能感をのびのびと描いていますが、映画では全能感の挫折を、シビアに、そして優しく描いています。 冒頭で、姉、姉の友達、母がでてくる意味も、しっか…

アバター

わかりやすいアクション映画。異世界感は想像していたよりも低めでしたが、舞台の星の自然に、観客が感情移入しなければならないから、これはやむをえないかな。 ただし、地球人は資源がほしいだけ、原住民は大切な土地を離れたくないだけなのに、なぜ全面戦…

サマーウォーズ

風通しの良い、上質なエンターテインメント映画でした。スピード感のある展開と、気持ちのいいキャラクターに引っ張られて、2時間があっという間です。密度が高いのに、さわやかな映画です。 細田守監督のファンなので、すでに何回か見たのですが、1回目より…

天元突破グレンラガン螺厳編

大傑作。少しでも興味のある人は必見です。テレビアニメを見ていない人たちにこそ、勧めたいです。 ロボットアニメのインフレバトルとして、『トップをねらえ!』を超えて、おそらく空前絶後。後半のバトル、バトル、バトルの展開は、圧倒的です。 テレビア…

劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇

上映館は少ないですが、TVシリーズを観ていない人には、是非ともお勧め。 最高にアツいロボットアニメです。年間ベスト級のアニメは、ここまで凄い。圧倒されます。

パコと魔法の絵本

『下妻物語』、『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督の新作。 いじわるじいさんの心変わりの物語。クリスマスキャロルを思わせます。だから、サマークリスマスなのか。 いい意味で、作り物の世界。とことん戯画化されています。ファンタジックな舞台劇のよう…

スカイ・クロラ

押井守監督のアニメ映画。 少年少女のまま、歳をとらないキルドレが、ショーとしての空戦に明け暮れる物語。 原作小説は未読です。バイオ技術で生まれた生物兵器、キルドレには基本的人権が無いようで、ひたすら日常生活と戦闘とを繰り返します。 「言いたい…

『崖の上のポニョ』は駄作です。観に行かないほうがいいですよ。

敵を作りそうな文章を書きます。不快だったら、読むのをやめてください。自分のブログなので、一切の遠慮なしに、本音を述べたいと思います。 昨日のレイトショーで観てきたのですが、最初の10秒で駄作を確信(イメージボードの絵(海中の魚竜のような船の絵…

『猫の恩返し』と『時をかける少女』

(7月19日までトップ固定。6月28日の記事の再掲です。) アニメ映画の話です。2008年7月4日に、森田宏幸監督の『猫の恩返し』が、7月19日に細田守監督の『時をかける少女』が、それぞれ地上波放映されます。 製作過程に因縁が深く、物語の構造が非常に似てい…

地上波放送を前に、原作読者が映画『ゲド戦記』を酷評する

(放映日の7月11日まで、トップ固定。6月29日の記事の再掲です。) 7月11日に、映画『ゲド戦記』の地上波放映があるようです。それを前に、原作の読者として、この映画について、言いたいことを言っておこうと思います。 ただし、原作小説と映画のDVDは、人…

地上波放送を前に、原作読者が映画『ゲド戦記』を酷評する

7月11日に、映画『ゲド戦記』の地上波放映があるようです。それを前に、原作の読者として、この映画について、言いたいことを言っておこうと思います。 ただし、原作小説と映画のDVDは、人に貸していて、現在手元にありません。記憶に基づいて書くので、不正…

『猫の恩返し』と『時をかける少女』

アニメ映画の話です。2008年7月4日に、森田宏幸監督の『猫の恩返し』が、7月19日に細田守監督の『時をかける少女』が、それぞれ地上波放映されます。 製作過程に因縁が深く、物語の構造が非常に似ている、この2本の作品を、これを機会に見比べていただくのも…