サマーウォーズ
風通しの良い、上質なエンターテインメント映画でした。スピード感のある展開と、気持ちのいいキャラクターに引っ張られて、2時間があっという間です。密度が高いのに、さわやかな映画です。
細田守監督のファンなので、すでに何回か見たのですが、1回目よりも、2回目のほうが、断然面白かったです。
この映画が、細田監督が10年ほど前に作った『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』と、終盤のストーリーラインなどが似ていることは、厳然たる事実です。
そのために、『ぼくらのウォーゲーム』のファンは、初見では、その類似性にばかりに目が行ってしまって、この作品の本質に目が行かなくなってしまう恐れがあります。私がそうでした。
『ぼくらのウォーゲーム』のファンは、是非とも2回は見てください。2回目以降の鑑賞では、この作品の独自性に注目して見ていくと、ストーリーのリズムや、伏線の妙、レイアウトの美しさなど、十分以上に楽しめることに気がつくはずです。私の場合、特に、前半部分の印象が、全く変りました。
また、公式ホームページやyoutubeなどで見られる、テレビCMなどのムービーは、かなりネタバレになっています。一般層にアピールするためには、情報の公開は仕方なかったのでしょうが、もう少し、本編の展開が読めないような配慮をして欲しかったと思います。
現状で予備知識のない方は、できれば、それらのムービーを見ないで出かけたほうが、より驚きを楽しめます。
(以下ネタバレ)『ぼくらのウォーゲーム』では、主人公が部屋から出ずに、世界を救うのが特徴でしたが、本作でも、主要な物語の舞台は、意図的に、陣内家をほとんど出ないように作ってあります。
作品の焦点が絞られて、それはそれで面白いのですが、陣内家の外での動き、例えば、イカ釣り船を新潟まで取りに行く道中とか、スーパーコンピュータを調達する苦労とかも、見てみたかったです。また、せっかく「上田わっしょい」の期間中だったのだから、祭りの様子とかも。作品の長さが3時間くらいあれば、そういった部分も描けたのでしょうが、尺の都合もあるので、そこは仕方ないかな。
終盤の展開の完成度は、『ぼくらのウォーゲーム』のほうが高かったかなと思います。「吉祥のレアアイテム」のくだりは、いらなかった気がしますし。主人公の健二が、最後に、直接的に救ったのが、世界全体ではなく、陣内家だったところも、ちょっと物足りなかったですね。
個人的には、仮ケンジのアバターが、かっこ悪く大活躍するところも見てみたかったです。『クレヨンしんちゃん』のオトナ帝国の、しんちゃんの階段登りみたいなやつ。
細かいところでは、翔太が佳主馬に殴られるところで、健二が「翔太にぃ」と呼んでいるところが違和感でした。ここは、「翔太さん」と呼ぶべきだったような。
佳主馬役の声優は、谷村美月さんで正解だったみたいですね。男の子か女の子か分からない声が、ちょっと妖しい魅力になっています。
細田作品好きにとっては、どれみを思わせるシーン(婆ちゃんの若い頃の写真)があり、ナージャを思わせるシーン(OZの背景に魚)があり、サムライチャンプルーOPを思わせるシーン(城で埋め尽くされる構造体)があり、オマツリ男爵を思わせるシーン(最後のパンチ)があり、で楽しかったです。