スタジオジブリにおけるDVD、BDの売上傾向



 先日、『コクリコ坂から』のDVD、BDが発売になりました。
 DVD、BDの売上本数(実売本数)については、オリコンから集計データが出ているようですが、一般には非公開です。ただし、巨大掲示板などにはその情報が貼られています。まとまったデータは、『したらば』のスレッド、こちらこちらでみることができます。新しい情報については、2ちゃんねるまとめサイトにも上がっています。ネットには、出荷本数のデータもあって、実売本数とは大きな差がありますが、今回は実売ベースで話をしたいと思います。
 この記事では、それらの実売本数情報に基づいて、最近のスタジオジブリのアニメ映画におけるDVD、BDの売上傾向について、整理していきます。


 『コクリコ坂から』のDVD、BDの初週の売上は、さまざまなバージョンを合わせると、約77,000本であったようです。他のソフト(ゲド戦記崖の上のポニョ借りぐらしのアリエッティ時をかける少女サマーウォーズあらしのよるに)の初週売上と累計売上をまとめると、図1のとおりとなって、最終売上は、初週売上の約1.8倍となるようです。
 仮に『コクリコ坂から』のDVD、BDの最終売上が、初週の1.8倍程度と仮定すると、想定最終売上本数は約14万本ということになります。



図1 DVD、BDの初週売上と累積売上の関係


 『コクリコ坂から』の最終売上が14万本前後になると仮定して、以下の検討を進めます。
 まずは、ジブリ映画における興行収入とDVD、BD(古い作品はVHS含む)の累積売上の推移についてです。
 近年の推移をまとめると図2となります。すみませんが、私が個人的に大好きな『ホーホケキョとなりの山田くん』についてはDVD売上がわからず、データから除外してあります。


図2 ジブリ映画における興行収入とDVD、BDの累積売上の推移


 問題は明らかです。『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』のバブルがはじけ、興行収入、DVD、BDの累計売上ともに、極端な右肩下がりです。それでも邦画興行収入の首位をとっている作品群ではあるのですが、かつてに比べれば、興行収入、ソフト売上とも極端に低下しており、改善のきざしはみられません。


 ジブリアニメと、比較的ヒットしたその他のアニメ(時をかける少女サマーウォーズブレイブストーリーあらしのよるに)の興行収入とDVD、BD売上との関係をプロットしてみたのが、図3となります。それの拡大図が図4です。
 参考のため、興行収入10,000円に対しDVD、BDが0.5本売れるというラインを補助線として引いてみました。
 すると、宮崎駿作品や時をかける少女サマーウォーズブレイブストーリーは、補助線よりもソフト売上が上となり、近年のジブリ作品4本(猫の恩返しゲド戦記借りぐらしのアリエッティコクリコ坂から)だけが、明らかに補助線よりもソフト売上が下となりました。
 近年のジブリ作品では、観客のうち、DVDやBDソフトを買う割合が極端に低くなっています。比較的地味な『あらしのよるに』や、あまり出来のよくなかった『ブレイブストーリー』と比べても、明らかに低いのです。



図3 興行収入とDVD、BD売上との関係



図4 興行収入とDVD、BD売上との関係(図3の拡大)


 興行収入10,000円当りのDVD、BDの売上本数を、図5に整理してみました。
 『千と千尋の神隠し』では、興行収入10,000円に対して、1本以上のソフトが売れていましたが、近年のジブリ作品では、興行収入10,000円に対して、0.3本強のソフトしか売れていません。興行収入60億円に対し、ソフト売上が20万本という計算です。
 一方、非ジブリの『サマーウォーズ』は、興行収入17億円ですが、ソフトは20万本以上売れています。



図5 興行収入10,000円当りのDVD、BDの売上本数


 興行収入に対して、DVD、BDの売上が小さいということは、観客にとって、そのコンテンツがあまり魅力的でないことを示しています。このことは、スタジオジブリにとって、興行収入の落ち込み以上に、深刻な問題なのではないでしょうか。
 ソフト売上の金額自体は、興行収入に比べれば小さいのですが、DVD、BDの売れるような映画をつくること、まずはそれが、興行収入向上への道ではないかと考えています。
 興行収入あたりのDVD,BDの売上ワースト3は、『ゲド戦記』、『借りぐらしのアリエッティ』、『コクリコ坂から』の3本でした。これらの映画について、「金を払ってまでソフトはほしくない」と多くの観客に思わせたことについては、映画の企画、プロデュースを含めて、真剣な反省が待たれるところです。