第9地区

 28年前に地球にやってきて、スラム化した収容所に暮らす難民のような宇宙人たち。粗暴で不潔。周囲の住民との軋轢から、移住計画が進められるが…
 宇宙人が同居している現代の日常、というのがまず新鮮です。主人公は、アクション映画に不似合いな小市民。宇宙人を抑圧する側だったのが、過酷な運命に巻き込まれて追われる側に、そして開き直った反撃に。
 乾いた映像が生みだすドキュメンタリーのような独特のリアリティと、荒唐無稽で痛快なB級アクションとが、絶妙のバランスで配合されています。スピーディーな展開に、おもわず身をのりだす面白さ。
 無茶な設定ではあるのでアラは多いのですが、それを凌駕する新鮮な驚きと楽しみがあります。発想の勝利。そして、監督の資質と、今回のテーマとの親和性の高さを感じました。かなり社会派な背景を含みますが、そちらに傾きすぎずに、エンターテインメントとしての道を貫いています。