『崖の上のポニョ』は駄作です。観に行かないほうがいいですよ。

 敵を作りそうな文章を書きます。不快だったら、読むのをやめてください。自分のブログなので、一切の遠慮なしに、本音を述べたいと思います。


 昨日のレイトショーで観てきたのですが、最初の10秒で駄作を確信(イメージボードの絵(海中の魚竜のような船の絵)が、何の説明も無くいきなり出てきたため。きっと、重要なシーンになるものだと思って、期待をしていたのに。)、最初の10分で帰りたくなり、30分後からは欠伸が止まりませんでした。


 『崖の上のポニョ』について、簡単に説明します。まず、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ人魚姫』という映画を想像してみてください。そして、そこから、ギャグの要素、一切の寄り道の要素、キャラクターの魅力、ストーリーの整合性を、すべて除いてみてください。それが『崖の上のポニョ』です。こんなものを映画館で見るくらいなら、レンタルDVDで、『クレヨンしんちゃん』の映画を見ているほうが、ずっとマシというものです。


 まず、登場するキャラクターに、魅力的な人物が全くいません。特に、主人公の宗介が、物語(破綻しているのですが)の進行に従うだけの、非常にご都合主義的な子供であって、少しも感情移入ができません。ご都合主義が、坊ちゃん刈りをして歩いているようなキャラクターです。
 宗介の行動を追っていくストーリーは、なんのトラブルも失敗も無い『はじめてのお使い』を見ているような気分でした。行って買い物をして帰るだけ、みたいな。子供が観ても、つまらないでしょう。観ていて、宗介がんばれ!ポニョがんばれ!という気分には、最後までなれませんでした。
 ポニョと宗介の出会いも、非常に淡々としていて、ドラえもんが机の引出しから出てきたり、オバケのQ太郎が卵から孵ったり、といったときのようなドキドキ感は皆無です。
 少女ポニョも、たいした活躍はしてくれません。水を噴いて、ハムを食べて、走って、ラーメンを食べて、ちょっと魔法を使って、寝るだけです。
 子役の声優たちも、健闘はしていましたが、優等生の演技という感じで、声によってキャラクターの魅力を引き出すことに、失敗していました。
 フジモトは、『説明台詞の鬼』という印象です。そして、その行動原理は全く不明です。プレシオサウルスのような船に乗っていますが、その設定は全然生きていません。船がそのような形である必然性は皆無です。これには心底がっかりしました。
 宗介の両親も、特に尊敬すべき人物には思えませんでした。とるにたらない小人物。


 ストーリーは、一言で言うと『セカイ系』です。ポニョがちょっとした魔法を使うだけで、世界は滅亡の危機に瀕します。そして、ポニョと宗介が、ちょっとしたことをすると、世界は救われます。
 最後に登場するグランマンマーレは、典型的な機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)です。
 ストーリーに突っ込みだすと、キリがありませんが、ネタバレにもなるので控えます。
 これがファンタジー? これが童話? ファンタジーや童話をバカにするのもいい加減にしてください。
 こんなものを、いい年をした大人が観に行くものではありません。また、子供にも見せたいとは思いません。


 マニメートの技法が凄い、波の表現が凄い、という評も聞きましたが、これも期待はずれでした。大波を大量の魚の群れによって表現する技法は、近年の宮崎アニメでよく見る、黒いドロドロがアニメーションする技法の、マイナーチェンジに過ぎません。手間はかかっているのでしょうが、手間を掛けただけの効果は、残念ながら全くありませんでした。


 音楽の使い方も、場面も観客の気持ちも一向に盛り上がらないのに、音楽だけが盛り上がったりして、これは映画『ゲド戦記』か! と思ったりしました。まさか、宮崎駿の作品を見ていて、息子の作品を思い出すことになろうとは、想像もしていませんでしたが。


 良かったところを探すとすれば、女の子のポニョのデザイン、大雨の表現、船出のときのちょっとしたワクワク感(すぐに裏切られますが)ぐらいでしょうか。映画代金には不足します。


 一部に、シュールで悪夢のようだとの評もありますが、そのようなものを見たければ、諸星大二郎の漫画を読めばいいと思います。そのほうが、よっぽど上質なものが味わえます。ポニョの波走りより、諸星大二郎の『栞と紙魚子』シリーズで、テケリ・リ!テケリ・リ!と走るクトゥルーちゃんのほうが、ずっと自由で闊達で魅力的です。また、グランマンマーレよりも、段先生の奥さんのほうが、はるかに魅力に満ちています。


 名作『カリオストロの城』『ナウシカ』『トトロ』を作った宮崎駿氏に、私ごときが、こんなことを言うのは僭越ですが、『アニメーションを舐めるな』、『子供たちを舐めるな』、と言いたいです。日本のアニメーションの将来のため、日本の映画の将来のためには、こんな映画はヒットしてはいけません。
 宮崎駿氏は、これ以上老害を撒き散らす前に、劇場用アニメーションの世界から引退すべきです。ストーリーもキャラクターも作る力がもうないのは、よく分かりました。このような低レベルのフィルムに労力を割く、大勢のアニメーターたちが気の毒です。