まんがライフ付録のトリビュート漫画
まんがライフ2008年12月号の付録、『まるごと神仙寺ほんぽ』より、『SPトリビュート動物のおしゃべり』の感想
こういうトリビュート企画(MOMOのとりかえっこ4コマなども含む)では、漫画家のスタイルの違いが際立ちます。
相手の土俵に入っていって相撲を取るか、自分の土俵に引きずり込んで相撲を取るか。今回の『動物のおしゃべり』のトリビュートでは、山野りんりん先生、富永ゆかり先生の女性陣が前者、伊藤黒介先生、小坂俊史先生、カラスヤサトシ先生の男性陣が後者です。特に、今回の男性作家陣は、飛び道具揃いです。
山野りんりん先生
今回のトリビュートで、擬人化したタローとサクラを出しているのは、山野先生だけ。犬形態のタローの、とぼけた顔も魅力。高い画力が生かされています。でも、お兄さんの顔を見ていると、『ちこりん日記』の妹を溺愛する変態兄を思い出してしまいます。
富永ゆかり先生
今回のトリビュートで、ペット以外の野生動物を擬人化したのは、富永先生だけ。いろいろな切り口があるものです。
カップの名前が、MIKAとANIになっているのが面白いです。
欠伸をしているタロー君がラブリーです。
伊藤黒介先生
伊藤先生は、今回のトリビュートについて、ご自身のブログで記事にされています。こちら。
伊藤先生のアプローチは、ご自身の『ベルとふたりで』の世界を、『動物のおしゃべり』のフォーマットで描くというもの。
擬人化してもコロッケ大好きなベルが、かわいいです。目鼻のパーツと、口のパーツの組み合わせに、ちょっとした違和感があり、それが味になっています。諸星大二郎先生の絵に近いような。
2本目は、すずとベルが、擬人化による会話を試みるも、グダグダで会話にならずというネタ。これを読むと、『動物のおしゃべり』という作品の世界が、幼稚園児とは思えない利発さの、美伽ちゃんというキャラクターに支えられている、ということが、よく分かります。
小坂俊史先生
小坂先生が、こういうトリビュートを描く場合には、作者本人では決して描けないであろう、危険なネタを仕込むのがお約束になっています。
「ナギーにおまかせ!」と「やまいだれ」のコラボのときも、ホニャップスの大スキャンダルという危ないネタを、かましていました。
今回は、いきなりの『魔女の宅急便』パロディ。実は映画『魔女の宅急便』は、後半を未見なので、1〜2コマ目が、どれだけ映画に忠実かは判断できません。すみません。ともあれ、単行本に収録されないからこそできる、ジブリアニメネタでしょう。
そして、美伽ちゃんの成人、タローの老犬化と、やりたい放題です。時間が止まっている設定の神仙寺漫画の急所をつく作品。
美伽ちゃんが、獣医の国家資格にチャレンジしているということは、18年後くらいかなあ。それならば、タローも老犬になるし、お兄ちゃんも三十路になるでしょう。
小坂先生のトリビュートで、美伽ちゃんが、いまひとつ美伽ちゃんっぽくないのは、アホ毛が無いからですね。大切です。アホ毛。
カラスヤサトシ先生
擬人化しない動物のおしゃべり。完全に自分の土俵で相撲を取っています。1本目は、言葉遊びの面白さもさることながら、生き物が生き物を食べるという、『動物のおしゃべり』では、巧妙に避けられているテーマに挑んだ野心作です。
2本目のポメラニアン、カラスヤ漫画では、よく見かけるキャラクターのような気がします。カラスヤ先生も、美伽ちゃんのアホ毛を描いていませんね。