ミステリ・オールスターズ



 本格ミステリ作家クラブ編のミステリアンソロジー。原稿用紙30枚以内の短い作品という条件で、新作ミステリを集めたもの。参加作家は実に28人。巻末にはリレー小説もあるけど、これも短い。
 なかなかに各作家のアプローチが面白いです。かなり短い作品という制約があるので、あまり複雑な事件を扱うと骨組みがむきだしになってしまいます。取捨選択が必要で、そこは料理の腕の見せ所。
 有名作品のパロディまたはパスティーシュもいくつかあり。ネタバレになるので、どの作品がとは言いませんが、タイトルで分かるかな。
 北村薫 『続・二銭銅貨』 江戸川乱歩二銭銅貨』のパスティーシュ。メタな意味での後日談という仕掛け。『二銭銅貨』読了者のみを読者に限定したという、マニア向けアンソロジーならの思い切った姿勢。原作の「はてな」を短編小説に昇華。
 森谷明子 『少しの幸運』 余分な要素をバッサリ捨てた、完成度の高いサスペンス。
 飛鳥部勝則 『羅漢崩れ』 講談社の『ベスト本格ミステリ2011』にも採録された作品。恐怖小説かつ本格ミステリ。完成度はピカイチ。
 芦辺拓 『長い廊下の果てに』 昔の『ショートショートの広場』で、カラ出張ネタの傑作があったのを思い出しました。
 辻真先 『密室の鬼』 豊富なキャリアを持つ辻真先先生でなければ書けない作品。アレを密室トリックに使うのは、他の作家が思いついても、作品化は不可能でしょう。
 早見江堂 『完全無欠の密室への助走』 マイホーム密室。矢口敦子先生が、早見江堂というペンネームでも活躍されていたとは知らなかったです。