卒業 〜開かずの教室を開けるとき〜

 はやみねかおるの長編児童ミステリ。15年にわたって書き続けられた夢水清志郎シリーズの、一応の完結編。
 ただし、レベルは高くないです。個人的に、夢水シリーズは、外伝1のころがピークで、その後は劣化していくだけという印象です。特に最近は、駄作が続きました。残念ながら、シリーズ完結編も、駄作の類です。
 殺人を扱わない長編ミステリシリーズとして、執筆には苦労があったとは思いますが、小説としても、あまりに密度が低いです。本作は500ページ以上もあるのですが、中身はスカスカです。歯ごたえのない綿菓子のような作品です。
 シリーズ完結編として、最後に、大がかりな謎を持ってくるのかと思いましたが、扱われる謎は、学校の怪談レベルで、スケールも小さく、実に不自然なものです。
 密室の謎がキーとなるのですが、密室トリックも、密室にする理由も、全く美しくありません。不自然極まりないです。また、同じトリックで、密室が3回も作られ、3回も開封されます。そのあたりも、美しくありません。
 青春小説としても落第です。中学生の卒業を扱っているのですが、表層だけを掬っていて、実に深みに欠けます。中学生の夢も、ドロドロした部分も、安っぽく描かれるだけです。シリーズキャラクターとの別れ、高校進学で別れる進路など、読ませどころは沢山あるはずなのですが、中学生の話なのに、小学生の作文を読んでいるような気分でした。
 シリーズ完結編だからといって、期待値を上げるのは禁物です。