真夜中の探偵


真夜中の探偵 (特別書き下ろし)

真夜中の探偵 (特別書き下ろし)


 有栖川有栖の長編推理小説。ソラちゃんシリーズ第二作。
 舞台はパラレル日本。第二次大戦後分割統治され、より専制的な政治体制下にある日本が描かれます。しかしながら、その閉塞感はリアルな日本と共通しています。そこでは探偵業が厳しく禁止され、空閑純の父親も逮捕されています。純はその状況下で、行方不明の母を探すべく、探偵を目指すのですが…
 パラレルワールド推理小説というと、例えば山口雅也のキッズ・ピストルズシリーズなどがありますが、あちらが探偵士という制度のある探偵のユートピアとするなら、探偵業の禁止された本シリーズは、探偵のディストピアと言えるでしょうか。しかし、本シリーズの探偵は、専制的な支配体制をゆるがす力を持つものとして、権力から恐れられています。探偵の持つ影響力を無視できないから、当局が禁止をしたわけで、探偵という行為の持つ潜在的なエネルギーが顕在化している平行世界と考えれば、そこはある意味で、探偵のユートピアなのかもしれません。
 小説として読み応えがあり、推理小説としても、政治小説としても、青春小説としても楽しめるお勧めのシリーズです。