『球場のシンデレラ』 小坂俊史

球場のシンデレラ (まんがタイムコミックス)

球場のシンデレラ (まんがタイムコミックス)


 小坂俊史先生による女子プロ野球4コマ漫画。芳文社からは久しぶりの単行本。タイトルは「ボールパークのシンデレラ」と読みます。
 現実の女子プロ野球とは別の世界。東京メルヘンズ、中京プリンセス、関西ウィッチーズ、東北アップルズの4チームからなる女子プロ野球リーグが舞台となります。
 主人公は、野球経験ゼロの元陸上選手で、今は東京メルヘンズの右のエースにして現役女子高生(留年中)の児玉郁代。
 主人公と同い年の4人のチームメイト、左のエースでライバルの早乙女、女子野球のイチロー宮古、体も太いが肝っ玉も太い深田、頭が弱い捕手の大木といった面々や、ベテランの栗橋、けがのベテランの桶川などの先輩たちとともに、ペナントを争ったり、最下位を争ったりします。
 野球を知らなくても楽しめるスポーツ漫画。多彩な登場人物が織りなす青春漫画でもあります。小坂漫画の入門編としても、おすすめできる一冊です。


 単行本には、おまけとしてメルヘンズの選手名鑑がついているので、そこから各選手の活躍などを確認してみます。


 まずチーム成績は28勝44敗、勝率0.389とかなりの負け越し。ウィッチーズが飛びぬけて強いので、そこで大きく負け越しているのでしょう。この世界での女子プロ野球の試合数は、72試合(24回戦×3チーム?)のようです。試合数が男子プロ野球の半分ですから、打者の本塁打と打点については、男子と比較する場合には倍にして評価するのが妥当でしょう。
 なお、現実の女子プロ野球は、1シーズン50試合のようです。


 個人成績について。
 主人公、児玉の成績は10勝21敗、防御率5.10。かなり打ち込まれましたが、野球の素人が10勝したのはすごいし、30試合以上登板したのはもっとすごいです。
 左のエースでライバルの早乙女は12勝17敗。72試合を、先発2人+ストッパー1人+敗戦処理1人の4人のピッチャーだけで投げ抜いたわけですから、みんなタフです。
 ちびっこ宮古は、打率0.362、打点21(144試合なら42相当)と、1番バッターとして文句のない成績。これで来年も月給12万円だったら、ブラックメルヘンさんが暴れだすかも。
 深田は、打率0.235、打点35(144試合なら70相当)、本塁打3。高卒でこの打点の多さはたいしたもの。
 チームの主力、熊井は打率0.244、打点67(144試合なら134相当)、本塁打12本(144試合なら24本相当)とさすがのひとこと。おそらく打者のタイトルは、ウィッチーズのスラッガー真木が独占したのでしょうが。熊井も十分に打点王を狙える数字。


 なお、現実の女子プロ野球では、本塁打が出ることは極めてまれなようです。2010年のリーグでは本塁打はゼロ。2011のリーグでは本塁打は2本でした。
 現実世界で本塁打2本を打ったのは小西美加選手。この選手はシーズン16勝を挙げている最多勝ピッチャーでもあるのです。そして、登板がない試合にも全試合出場して、打率はリーグ4位。現実の女子プロ野球は、「エースで4番」もありうる世界のようです。


 魅力的なキャラが満載で、十分に長期連載ができる作品でしたが、1巻にて終了ということになりました。いつかどこかで続きが読みたい作品です。