賢者の贈り物

 石持浅海の連作短編小説。基本的には、日常の謎系のミステリです。短めの作品が10本も入っています。
 この作品は、謎がちょっと特別で、童話などでおなじみのシチュエーションが、解くべき疑問として提示されます。例えば、金の斧と銀の斧だったり、賢者の贈り物だったり、玉手箱だったり。その謎の提示の仕方は面白く、魅力的です。
 ただし、小説の内容としては、その謎を、ディスカッションしたり、自問自答したりしながら、試行錯誤を繰り返して、ひたすら解いていくというものなので、ちょっと単調に感じます。作品によっては、「そんなどうでもいいことを、延々と考察するなよ。うっとうしい。」と思われることさえありました。日常の謎は、あんまり突き詰めて考えすぎると、くどくなるようです。また、推理の過程では、仮説の棄却が安易すぎて、ちょっと乱暴に感じるところもありました。
 謎の解明については、納得できるものもあり、こじつけに近いものもあり、といったところです。
 あと、「木に登る」は、完全なインサイダー取引で、違法だと思いました。
 文句ばかりつけましたが、読み口は軽く、一編一編も短いので、気軽に読めるエンターテインメントとしては、十分に合格点です。


賢者の贈り物

賢者の贈り物