ふたりの距離の概算

 米澤帆信の青春ミステリー。古典部シリーズ。
 20kmのマラソン大会を走り終えるまでのタイムリミットで、古典部への正式入部を辞退した少女の謎を、高校生奉太郎が考察します。彼女とすごした日常の中にそのヒントはあったのですが。
 浮かび上がってくるのは、人と人とのどうしようもない距離。だからといってニヒリズムに走るわけではなくて、高校生たちは、それぞれが自分にできる限界までベストに近い行動をとろうとします。でも届かないことはあるわけで。軽やかで苦い青春小説の傑作です。
 設定としては、「9マイルは遠すぎる」を思わせるものがあります。あちらが、「A nine mile walk is no joke especially in the rain.」であれば、こちらは「Twenty kilometers running is too far to think nothing.」といったところでしょうか。でも、思考実験のみを続けるのではなく、高校生活の日々を振り返りながら、軽やかに物語は進みます。でも、奉太郎の推理は、緻密で知的でスリリングなものです。
 必読の作品。必読のシリーズです。


ふたりの距離の概算

ふたりの距離の概算