温かな手

 石持浅海の連作推理小説。素人探偵もの。ただし、探偵役を務めるギンちゃんとムーちゃんは人間ではありません。人間そっくりだけど、実は人間のエネルギーを吸い取って生きている別の生命体です。でも、SFではなくて、本格ミステリです。
 ギンちゃんとムーちゃんには、それぞれ別のパートナー(人間)がいます。パートナーとギンちゃん、パートナーとムーちゃんは、外向きは恋人同士を装って、共同生活をしています。パートナーは、余剰のカロリーをエネルギーとして、ギンちゃんたちに供給しているのです。
 パートナーとギンちゃんたちは、別の生命体なので、その間に、恋愛感情はありません。しかし、確かな信頼関係は築かれており、そのあたりの人間?ドラマも読みどころのひとつとなっています。
 作品では、ギンちゃんたちが、次々と事件に巻き込まれることになります。名探偵は、事件が起きても超然としているものですが、この作品の場合、別の生命体が探偵をするのですから、その客観性はゆらぎません。
 事件が起きても、警察の捜査が開始される前に、関係者によって、実に緻密な考察がなされます。その論理のキレは、さすが石持浅海といったところです。素人探偵が、ロジカルな推理をする作品が好きな方には、自信を持ってお勧めいたします。

温かな手

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