ビッグコミックオリジナル2015年9月増刊
ビッグコミックオリジナル2015年9月増刊の感想
『その女、ジルバ』 有間しのぶ
多くの場合、愚行や蛮行は、理想や美辞麗句の下で、醜く蔓延します。人間は、理想とは程遠い、かっこ悪いくらいの姿で生きるのが、丁度いいのでしょう。
『まどいのよそじ』 小坂俊史
第11回 おやじバンド
「うわー、これは実にロックじゃないな」(『やまいだれ』2巻46ページより)
さて、おやじバンドのおやじ臭さって、何に由来しているのでしょうか。
ロックをやっているプロミュージシャンにも、40歳以上は珍しくありません。近年では、40歳未満のプロミュージシャンのほうが、少ないくらいかもしれません。しかし、ベテランのプロミュージシャンの姿に、おやじ臭さを感じることは、まずありません。
多くの世界に、プロとアマは存在しますが、プロとアマのまとう空気感が、これほどに違うジャンルというのも、珍しいように思います。
この違いを生む要因として、ひとつ思いついたのは、おやじバンドが「過去の栄光にすがっている」ということです。現在も戦い続けているプロと、過去を懐かしむアマでは、老いぼれかたが違ってくるのかもしれません。
1ページ目の缶ビールと、3ページ目のジョッキビールとの対比が、時間の経過と、人生への妥協のしかたの変化を暗喩します。
「ダサさ」と妥協してきたはずのバンド活動だったのに、4ページ目の「ダサいだけですから」という台詞をきっかけに、「ダサい」というキーワードが強烈な呪縛となって、主人公を懊悩させることになりました。コバンザメという気楽な立場でラッキーだと思っていたのに、コバンザメゆえに、いちばんシビアな選択を迫られるハメになるというのは、なかなかの皮肉です。
あんまりロックじゃない登場人物たちの中で、主人公の奥さんが一番ロックでした。