まんがライフオリジナル2014年8月号

まんがライフオリジナル2014年8月号の感想
http://4koma.takeshobo.co.jp/cat04/6009/

おうちがいちばん』 秋月りす

 村祭における生ける妖狐伝説。

『野村24時』 板倉梓

 失恋のやけ食いと、カップルの仲立ちを同時にこなす。斉藤のハイスペックな聖人ぶり。

『晴れのちシンデレラ』 宮成樂

 三条弟のメールから伝わってくる人柄。晴さん泣いちゃいそう。

『ゆにいる』 渡邉

 赤瀬川原平の梱包芸術みたい。

『星降り村事件ファイル』 碓井尻尾

 人ごみの中を歩いても、浴衣と甲冑の違いに気づかない姉の器のデカさ。

『白衣さんとロボ』 柴

 萌える目覚まし。そして三千円の手にデジャブ。サイン会のしおりを引っ張り出してみたら、永井ハルコの場合は4だった(髪型似てますよね)。

『神域聖地霊場Walker』 カラスヤサトシ

 この画力では、レポート漫画の体を成していないような気がします。神社仏閣にしか行かない連載なのですから、それぞれの神社仏閣の描き分けをしてもらわないと、話になりません。どのような「場」なのか理解できない状態で、レポート漫画に没頭することは不可能です。

『月刊すてきな終活』 小坂俊史

case14 : A氏の場合
 今回の主人公は、匿名の人物です。
 顔からは目が省かれ、背景の描写もない白い空間で話が進みます。主人公の服装はいつも同じ。靴下をはいているのか、靴を履いているのか、屋内と屋外で足元の描写が変わらないという抽象的な表現をとっています。
 それは、シンプルな舞台装置で行われる現代演劇のようです。
 主人公のリアリティを描写せずに、漠然とした表現にとどめたのは、ひとつには、主人公の彼が、私であり、あなたであり、作者であり、一度でも自殺について思いを巡らせた全ての人たちについての、一般化されたイメージだからでしょう。
 抽象的な表現のもうひとつの理由は、死を考えた彼が、世間の営みから切り離されて、外界が見えなくなっていることの暗喩でしょうか。身の回りにあるこまごまとしたことが目に入らず、自分と死のことだけを考えている状況が、真っ白い背景には表現されているように思います。
 「吊る」 漫画の感想を書くときには、ネタ探しのために、積極的に画像検索とかをするのですが、今回はできませんでした。死体の写真を見るのは平気なはずなのに。
 「切る」 この形のカミソリ、現在では見なくなりましたね。床屋さんぐらいしか使ってないかも。死から隔絶された現代の髭剃り。
 「飛ぶ」 2コマ目の段階では、後ろのサラリーマンは、完全に自分の世界の外にいる人。話の内容が聞こえてきて、自分に関係ある人となる。
 「落ちる」 バンジージャンプはやったことがありますが、自由落下する時間は短いのに、やはり自由落下は生理的に怖いですね。ただし、ウイングスーツ程度の装備でも飛べるわけですから、墜落死と飛翔との距離は意外に短いのかもしれません。
 「迷う」 青木ヶ原樹海は30平方キロメートル程度の広さで、遊歩道もあり、道に迷わなければ、縦断は比較的容易だそうです。道に迷うと悲惨ですが。
 「燻す」 七輪を買って、練炭を買って、焚き付けにつまずくというのは、人生の縮図のようです。小さなハードルがバカにできない。
 「働く」 表で自殺のバリエーションを網羅しつつ、裏では「死ねない理由」のバリエーションも同時に網羅していたという高等技術に圧倒されます。そして、1コマ目と2コマ目で、作品のリアリティレベルが大きく転換し、主人公が現実世界に降りてきて、目の前の現実と向き合い始めるようになります。安アパートの背景を描いて、目を描き入れるだけで、孤独な死の世界にいた抽象的な人物が、卑近な現実と向き合う一人の男に戻ります。いつかは自殺をするとして、とりあえずは死ぬ日まで、死ぬ準備が整うまで、猶予期間として生きてみている、という思いで日々の人生を送っている人間は決して少なくないはず。
 「本末転倒」 余命女の余生。
 「生きる」 「自分は特別だから、特別な死に方をしなければならない」と思いあがっているうちは、死ぬのも大変だし、生きるのも大変なのでしょう。しかし、「自分が特別だ」という思いが皆無の状態のままに生きていくのにも、それはそれで別の種類の辛さがあるように思います。