贋作『坊っちゃん』殺人事件

 柳広司の中編ミステリ。
 夏目漱石の『坊っちゃん』の後日譚という形式をとりながら、原作『坊っちゃん』のエピソードの意味を大胆に読み替えてみせるパスティーシュ
 帰京から3年後、主人公と山嵐は、あの天誅事件の直後に自殺をしてしまった(!)という赤シャツの謎を追って、ふたたび四国へと赴きます。調査を進めるうち、日露戦争後という世相を背景に、呑気なはずの四国の風景は、謀略渦巻く魔界へと転じていき、主人公と読者を翻弄します。
 時代背景を考慮すれば、あるいはこうであったのかもしれない夏目漱石アナザーワールド。まだ日本が若い国家であったころの物語。