七姫幻想

 森谷明子の歴史ミステリ連作。
第60回日本推理作家協会賞の候補作。落選はしましたが、受賞者の桜庭一樹先生が、『ミステリーズ!Vol.23』の対談で、
「候補作では森谷明子さんの『七姫幻想』を読んでいて、すごく好みだったので、一緒に名前が並んでいるのは嬉しいような、微妙な感じでした。『七姫』が受賞していても素直に喜んでいたと思います。」
と語っていたほどの傑作です。
平安時代を中心に、大和時代から江戸時代まで、時代を下りながら描かれる七編の連作小説。水辺の里に暮らす謎多き一族の歴史を縦糸に、その時代時代の皇族にまつわる愛憎のドラマを横糸にして織られる、繊細な織物のような物語です。
ミステリーとしても、密室あり、フーダニットあり、日常の謎あり、伝承の謎ありとバラエティに富んでいます。物語としては、少女漫画のようにロマンティックな「朝顔斎王」が好みでした。
歴史上の有名人物が、そこここに現れるのも素敵な趣向でした。また、各話の終わりには、和歌が添えられていて、和歌と小説とが絶妙に響きあっています。
歴史が嫌いでなければ、ぜひともお読みいただきたい作品です。

七姫幻想

七姫幻想