ファミリー4コマ誌の類似性に関する分析

1.はじめに

 まんがライフ2017年5月号の柴先生『白衣さんとロボ』に、以下のような内容がありました。
 白衣さんも分析を行っているようですが、個人的にも興味が出てきましたので、ファミリー4コマ誌の類似性に関する分析を、独自に行ってみることといたしました。

2.調査の対象

 調査の対象は、2017年3月27日〜4月22日の期間に発売されたファミリー系4コマ漫画雑誌12誌としました。
 芳文社では『まんがホーム』、『まんがタイム』、『まんがタイムジャンボ』、『まんがタイムファミリー』、『まんがタイムスペシャル』、『まんがタイム』の6誌を調査しました。
 竹書房では『まんがくらぶ』、『まんがライフオリジナル』、『まんがライフ』、『まんがライフMOMO』の4誌を調査しました。
 双葉社では『まんがタウン』1誌、ぶんか社では『主任がゆく!スペシャル』1誌について、調査を行いました。

3.調査の内容

 上記の雑誌について、他誌への執筆がある作家の数を、雑誌ごとに整理し、その割合を比較しました。また、ひとりの作家が、調査期間中に4コマ誌に発表した作品の数についても、雑誌ごとに集計して整理し、その比較を行いました。
 さらに、その雑誌に執筆している作家が、その他に、どの雑誌に執筆しているかについて、傾向の調査を行いました。そのデータを使用して、掲載作家による雑誌の傾向を二次元のグラフに整理しました。

4.集計の方法

 上記の調査に用いる集計については、以下の方針で実施しました。
 1人の作家が、1つの雑誌に複数の作品を掲載している場合は、便宜的に、作品数を1つとしてカウントしました。
 他誌に掲載されている作品が、同一タイトルである場合については、別タイトルの場合と区別はせず、同じ方法で集計を行いました。
 ゲスト漫画については、連載作品と区別せずに集計を行いました。
 ショートストーリー漫画についても、集計に含めました。イラスト付きエッセイについては、集計外としました。

5.調査結果

5-1 他の4コマ誌に執筆している作家の数と割合

 雑誌ごとに、他誌への執筆がある作家と、ない作家をカウントすると、下図のようになりました。どの雑誌においても、他誌と共通する作家が10人前後いることが確認されました。
 これらのうち、『まんがタイムファミリー』、『まんがタイムスペシャル』、『まんがライフMOMO』の3誌については、他誌と共通する作家が10人を下回っており、全体と比較すると少ない傾向にありました。


 他誌にも執筆している作家を、全体に対する割合として示すと、下図のとおりとなりました。全体的にみると、4割前後の作家が、他誌と共通していました。
 このうち、『まんがタイムオリジナル』、『まんがライフ』、『まんがタウン』の3誌については、他誌と共通する作家の割合が50%を超過しており、メジャーな作家を多く使っている傾向が確認されました。
 一方、『まんがタイムファミリー』、『まんがタイムスペシャル』、『まんがライフオリジナル』の3誌では、他誌と共通する作家の割合が40%未満となりました。
 『まんがタイムファミリー』、『まんがタイムスペシャル』については、若手作家の積極的な起用が、その理由になっていると考えられます。
 『まんがライフオリジナル』については、多少事情が異なっており、4コマ誌以外でも活躍するベテラン作家が多いことが、他誌と共通する作家の割合が低くなった要因と考えられました。


 掲載作家の約4割が、他誌と共通しているということを、雑誌の類似性として、どのように評価するかは、難しいところです。
 個人的には、「予想より割合が低いな」と感じました。具体的なデータはありませんが、10年前ならば、もっと割合が高かったかもしれません。
 当時は、4コマ誌以外の発表媒体が少なかったため、専業の4コマ漫画家としてやっていくためには、4コマ誌に3作品前後の連載がないと苦しかったように思います。
 現在では、4コマ漫画とストーリー漫画を両方こなせる作家が増えていることや、発表媒体にWEBが加わったことによって、4コマ誌での連載数が少なくても、プロとして十分に活躍している作家が増えてきました。

5-2 掲載作家が執筆している作品数の集計

 それぞれの雑誌に執筆している作家が、集計期間の4コマ誌で発表した総作品数を集計すると、下図のようになりました。なお、同タイトルの作品でも、雑誌が異なれば2作品として集計しています。
 芳文社の雑誌と比較すると、竹書房双葉社ぶんか社の雑誌では、4作品以上を執筆している作家の割合が高く、全体の2割程度となっていました。これには、いがらしみきお先生と、竹書房での森井ケンシロウ先生の寄与が大きいです。
 また、3作品以上を執筆している作家の割合は、『まんがタイム』、『まんがタイムオリジナル』、『まんがライフ』で高く、全体の4割程度となっていました。これらの雑誌では、実績のある作家の作品を、比較的多く掲載している傾向がみられます。
 2作品だけを執筆している作家の割合は、『まんがホーム』、『まんがタイムジャンボ』、『まんがタウン』で高くなっていました。これらの雑誌では、新進気鋭の作家に、多くのチャンスを与えているかたちとなります。

5-3 雑誌相互での作家の共通性

 各雑誌の執筆作家が、その他にどの雑誌に作品を発表しているかを集計すると、下表のとおりとなりました。表が細かくなってしまっており、申し訳ありません。表の赤い部分は、4作家以上が共通していることを示しています。
 芳文社の雑誌では、『まんがホーム』、『まんがタイム』、『まんがタイムオリジナル』の3誌において、多くの作家が共通していました。また、『まんがタイムオリジナル』については、竹書房の『まんがライフオリジナル』とも、共通する作家が多い傾向にありました。
 芳文社のその他の雑誌では、他誌との共通性は、それほど高くありませんでした。
 竹書房の雑誌では、芳文社と比較して、社内の雑誌で共通する作家が多いという傾向がみられました。また、『まんがライフ』、『まんがライフMOMO』の2誌については、ぶんか社の『主任がゆく!スペシャル』と共通する作家が多いことが確認されました。
 また、双葉社の『まんがタウン』についても、『主任がゆく!スペシャル』と共通する作家が多いことが確認されました。

5-4 複数を執筆している作家のカテゴリー分け

 複数の4コマ誌に執筆している作家は、芳文社のみで執筆している作家、他の出版社(竹書房双葉社ぶんか社)のみで執筆している作家、芳文社と他の出版社のいずれにも執筆している作家、の3つのカテゴリーに分類できます。
 その分類について、敬称略、順不同で示すと、下表のとおりとなりました。

5-5 雑誌ごとの傾向に対する主成分分析

 それぞれの雑誌における掲載作家の傾向から、主成分分析という手法で、各雑誌の特徴を二次元のグラフとしました。グラフ上で近い位置にある点については、類似性が高いとみなせます。
 掲載作家の傾向より、4コマ誌は4つのグループに分類できました。
 グループAに含まれるのは、『まんがホーム』、『まんがタイム』、『まんがタイムオリジナル』の3誌で、芳文社の比較的オーソドックスな4コマ誌です。ただし、『まんがタイムオリジナル』については、他の2誌との傾向の差異が多少みられました。
 グループBに含まれるのは、『まんがタイムジャンボ』、『まんがタイムファミリー』、『まんがタイムスペシャル』です。芳文社の比較的フレッシュな4コマ誌といえるでしょうか。このうち、『まんがタイムジャンボ』については、他の2誌との傾向の差異が多少みられました。
 グループCに含まれるのは、竹書房の『まんがくらぶ』、『まんがライフオリジナル』の2誌でした。この2誌では、比較的キャリアの長い作家が共通しています。
 グループDに含まれるのは、竹書房の『まんがライフ』、『まんがライフMOMO』と、ぶんか社の『主任がゆく!スペシャル』の3誌でした。今回の結果からも、『主任がゆく!スペシャル』と、『まんがライフ』、『まんがライフMOMO』に共通点が多い傾向が確認されました。なお、安西理晃先生は、この3誌に連載を持っています。
 まんがタウンは、グループBとグループDの中間となりました。比較的傾向の近い雑誌は、『まんがタイムスペシャル』と『まんがライフMOMO』となります。

6.おわりに

 以上のように、4コマ誌では40%前後の作家が他誌と共通しており、雑誌によっては50%を超える場合もありました。
 一方で、掲載作家の傾向は、雑誌によって、かなり異なっていました。新人とベテランで打線を組む雑誌、中堅中心で打線を組む雑誌がありましたが、今回のデータによる分類は、事前の個人的な印象と、あまり遠くないものでした。
 今回の調査で、定期的に購読していない雑誌もいくつか購入しており、まだ読み切れてはいないので、今後が楽しみです。特に、『主任がゆく!スペシャル』には、気になる作家が多く、今後はチェックをせねば、と思いました。