天津向の4コマトーク第3回レポート
記事にするのが、大変遅くなりました。
2011年1月17日に行われた『天津向の4コマトーク第3回』のレポートです。それにしても遅い。もう第4回も終わっちゃったよ。第5回は5月9日だよ。第6回は7月10日だよ。
かなり記憶が怪しいので、その辺りはご容赦ください。
この記事は、kow_yoshiさんの実況ツイートと、すいーとポテトさんとkow_yoshiさんがまとめられたツイートまとめ、Togetter(こちら)を大幅に参考にさせていただきました。感謝申し上げます。と言うか、こちらを読んでいただければ、別にこの記事は読まなくても…。
第3回のゲストは、小坂俊史先生とネゴシックスさん。主催はもちろん天津の向清太朗さんです。
オープニング
『中央モノローグ線』でおなじみ、阿佐ヶ谷の海鮮メリーゴーランド跡(閉店してしまいました)の横、阿佐ヶ谷ロフトAが会場。19:30開演。
4コマ系アニメの主題歌が流れる開演前。いっぱいの客席には、4コマ漫画作家、編集者が多数の模様。
開演。天津向さん登場。
まんがタイムきららミラクとまんがタイムラブリーの話をネタふり。完全についていく客席。
コミケで4コマ漫画家さんに挨拶した話。トレードマークの眼鏡を外して、帽子をかぶっていたら、向さんと気づかれないのは普通だと思います。
『ゆゆ式』、『わさんぼん』、『非実在少女しずむちゃん』を推す。『しずむちゃん』は同人誌。同人誌『まんがぶらふオリジナル』にも一部掲載されていました。エロス+残酷+シュールな漫画。マニアックな話題にも、全く振り落とされない客席。
小坂俊史先生登場
遠野から4時間半かけて小坂俊史先生登場。個人的には移動時間の短さにびっくり。新幹線を使うこともあるんだと。だって、第4回の4コマトークには、鈍行で10時間かけて上京した先生ですよ。
お酒は一杯で酔っ払うという小坂先生。
向さん、『中央モノローグ線』を推す。これを読んで、いつか売れてやると泣いた。今日も中央線に乗っていて、すこし泣いた。
向さん、小坂先生、重野なおき先生、みずしな孝之先生の三つ巴を力説。小坂先生、自分がシニカルな作風なのは、王道を行く重野先生との差別化だと語る。(多分、テレを含んでのポーズだと思う。)
小坂先生、上京のたびに中野を巡回。月に1回くらいのペースで上京しているとのこと。
小坂先生は、向さんのことを、まんがライフMOMO掲載のカラスヤサトシ先生のレポート漫画『萌道』で知った模様。私を含め、4コマファンにはそういう人が多そう。
小坂俊史先生の「短編脳」の話。映画が見られない。10巻以上の長編漫画が追えない。タイタニックを見たことないし、ワンピースは腕が伸びること、ナルトは忍者の話らしいことしか知らない。(実は私もです。私もテレビで映画を見ることが苦手で、スターウォーズすら見ていません。)
向さん、そのうち『せんせいになれません』も自分で読めなくなるじゃないですか、とツッコミ。
小坂先生のデビュー当時の話など
小坂先生はインタビューなどで、デビュー当時のことを語られることが実に多いです。あのころのハングリー精神が出発点だと思っているのでしょう。
就職活動全敗、まんがくらぶ投稿35日後にデビューの話。
4ページの読み切りの仕事が来た場合、1本目の作品から笑わしに行った。読み切りの場合、1本目は人物紹介などで消費することが多いが、自分の場合は、1本目から勝負のつもりだった。4ページには7本の4コマ漫画があるが、そのうち4本がヒットすればいいという考えだった。
自分がデビューできたのは、きらら前だったことも大きいと。きらら創刊後のタイミングだったら、デビュー自体なかっただろうと小坂先生。さすがのネガティブ発言。
向さんのツッコミに、自分はネガティブな人間だと言う先生。
遠野の話など
「ネガティブな人が遠野にいきますか」という向さんの台詞から遠野の話に。
遠野に引っ越したのは、引っ越しても困る人がいないから、と小坂先生。
遠野の印象は、歩く人が少ないこと、車社会。
遠野に住むのは今年の秋までの予定。次は沖縄とかどうですか、という向さんに、山口県の生まれなので南国にはそれほど憧れがないと答える。
遠野のファミレス(おそらくは「まるまつ」)でネタだし。さすがに漫画家だとばれた。
10年に一回遠くにジャンプする性癖があると小坂先生。10年前は、(4コマの仕事が不確定なのに)上京したこと。
4コマ漫画の作法について
まず4コマまで通しで作ってから、4コマ目が最も生きるように、途中の展開、2コマ目、3コマ目を組み直す。
ひらめきで4コマ目を作るのだが、自分はひらめきが弱い。だからそのままでは成立しない。4コマ目がきれいにひっくりかえるように、2コマ目、3コマ目でその逆逆となるように、伏線をはっていく。
そうやって構成するので、シンプルな4コマにはなりにくい。
小坂先生の口から、「自分はひらめきが弱い」という言葉が出るとは意外でした。でも、この後の話ともつながるのですが、ひらめきが弱いという自覚があるからこそ、ロジカルな構成力に頼って、これまで4コマを作ってきた、という自負があるのでしょう。
小坂先生のデビュー当時は、まだ吉田戦車フォロワーによる不条理4コマのブームが続いていました。不条理系は、ひらめきが勝負ですが、天才である吉田戦車は別格として、フォロワーたちのひらめきのみに頼った4コマは、ときにかなり空虚でした。結構スカスカの印象だったのを覚えています。そういった不条理系4コマに対し、単身、密度の高いロジカル系4コマで戦って、とにもかくにも生き延びてきた、小坂先生の自信から来た言葉なのかもしれません。
4コマ漫画の作法については、『あしなり』や、『月刊まんがの森 vol.90』でも語っておられますね。以下で少し抜粋します。
『あしなり』より抜粋
とりあえず4コマを1本描いたら2と3コマめを見直すんです。
オチである4にかかる2と3はとても大事です。
ときに「しつこいかも?」と思うほどに2と3に4につながる伏線を張るんです。すると同じオチでも全く変るんですよ。
だから描き直すのは圧倒的に2か3が多いですね。そこの出来で4(オチ)のキレ味がかわりますから。
『月刊まんがの森 vol.90』より抜粋
●4コマでネームを考えるときはどういうところから始めるのでしょうか?
まず1コマ目の起こしが重要なんですね。キャラをどういう状況に置くかというのが重要です。1コマ目ですごくリアリティのある、生活感のある1シーンを切り取れたらそれだけで嬉しいんですよ。
最近『ハルコビヨリ』なんかは特に、1、2、3くらいまではキャラの流れでポンポンと行くんですよ。その後4をじっくり考えて4が出来たら、4の台詞にいろいろかかるように3、1、2の順で戻って調整していきます。4の台詞が一番活きるためには、1、2、3コマをまたどうするかということです。
●それは今まで描くなかで培われたノウハウ?
そうですね。2コマ目もけっこう重要で、たいていオチへの振りがなにかあるんですよ。あと台詞は3行を超えないようにしています。どうしても説明しきれない場合は増えることもありますが、ともかく説明不足が一番怖いです。
●オチに至るまで様々な試行錯誤があるわけですね。
だからオチにもちゃんと理由がいるんですよ。理由を作るために1、2、3コマでシチュエーションをちゃんと作って、こうオチざるをえないように追い込むんですね。ほんとうはネームは一晩くらい寝かしたいです。
こういった話を生で聞けると、やはり興奮しますね。
質疑応答など
客席から質問を募る。『サークルコレクション』について
自分はネガティブなところからしか、物語をはじめられない。恵まれた主人公に対して、物語は湧いてこないと小坂先生。
確かに、小坂先生の漫画の主人公は、ダメ先生、ダメフリーター、ダメ編集者、ダメサークル、ダメ家族、ダメ女、ダメバンド、ダメOL、ダメラーメン屋、ダメプロ野球選手(男女とも)と、まさにダメづくし。でも、ただのダメでは終わらない、楽しさ、闊達さがそこにはあります。
『あしなり』の「たまーに新人さんとかで、ああ4コマなめてんな、って人のマンガ読むとイラッとくるんだよねー。まあだいたいそういう基本のなってない人は消えますけどね」発言についての質問。
誤解がある。頭にあったのは、不条理系の吉田戦車フォロワーである。デビュー当時は周りにいた。4コマ目までの発想の飛距離があれば、漫画のクオリティーは問わないといった風潮には、ついていけなかった。
(実際の話、吉田戦車フォロワーは短命な人が多かったように思います。)
デビュー当時は、面白くない4コマ漫画のパターンを研究し、そのパターンを使わないように意識していた。その研究内容は発表できない。
ガチ4コマ
小坂先生、発想が弱いので大喜利はできないと拒否。そのかわり、ガチで1本、オリジナルの4コマ漫画を描くことに。テーマとキャラクターはくじ引き。テーマは「ラップ」、キャラクターは「せんせいになれません」で決定。他のテーマは「キス」など。
1時間で4コマ1本を描くことに。小坂先生、苦しみながら一旦退場。
後半
恒例のしんちゃん塾投稿コーナー。向さんが「まんがタウン」にガチで投稿。前回の投稿作を紹介。今回のネタをひねりだす。
ゲストでネゴシックスさん登場。4コマ誌に漫画投稿をしたことあり。今回は、そのときの漫画と、向さん原作(作画は別の人)の漫画を、それぞれプロの編集者に見てもらい、講評をいただくという企画。編集者ゲストは、ぶんか社の山ちゃんさん。
ネゴシックスさんの漫画は、ちょっと古風にネタ重視で、少しシュールな漫画。荒削りですが、芸人ならではの瞬発力あり。ハーフなのに英語が喋れないキャラも登場。
向さん原作の漫画は、女子高生3人のキャッキャウフフ漫画として、みごとにテンプレートが確立された1本。ある種の漫画の典型的な展開。そういう漫画をいかに読みこんでいるかが伝わってくる作品で、4コマ愛を感じるという意味では、かなり凄い。
編集さんの指摘は、びしばしと。さすがに的確でした。向さんの作品の「何でもやってみよう部」は、まず方針を決めないで、後で人気が出るように方針を決めればいいや、という姿勢で姑息だと。
小坂先生再登場
小坂先生再登場。作品は完成したが、年に数回ある時間がなくて帳尻り合わせしたような作品で、見せたくないと。
しぶしぶ作品公開。
1コマ目 河田「うちの校歌、ラップにしちゃおうぜ」、岡部「あの恥ずかしいの、変えちゃいましょう」
2コマ目 ノリノリでラップを歌う岡部と中野
3コマ目 河田が岡部たちをしばく。「それが!校歌を歌う!態度か!」
4コマ目 岡部たち並んでラップ斉唱。岡部「逆に恥ずかしいです」
場内の拍手なりやまず。
1コマ目が出来るまで15分かかった。面白いことが始まりそうな1コマ目を考えるのには時間がかかる。ラップを恰好悪くしたかった。とすると、音楽教師の和泉よりも、河田のほうが適役となった。
本来ならば、2コマ目、3コマ目をもっと工夫したかった。なお、1コマ目の岡部の台詞は、終了1分前に差し替えた。もとは「それはいいっすね」みたいな台詞。これを「恥ずかしいの」が入った台詞に変えることで、4コマ目の「恥ずかしい」を生かす伏線として機能する。本来はこういう作業を、2コマ目、3コマ目でもやりたかった。
色紙
「4コマとは」というテーマで色紙を描くことに。
これまでの色紙は、施川ユウキ先生「4コマとは画力あんまり関係ない」、大沖先生「4コマとは\すげえ/」など。
小坂先生は、河田のイラストを描き
「4コマとは
頼りがいの
あるルール」
と書く。そして河田に「頼れ!」と台詞を。4コマのルールの中でロジカルに作品を組み上げる小坂先生に相応しい、強くしたたかな言葉。
自分は世の中に対して、特に言いたいことのあるような人間ではない。4コマという枠があるから、その枠の中でなら表現できる、と小坂先生。
最後にエンジンがかかってきた小坂先生、「作品は自分ルールでガチガチに縛って作る」「自分のネガティブの、今日は30%くらい」などと発言。
もっと話を聞いていたかったが、時間となり終了。
以上でレポートは終了です。つたなく、かつ不正確なレポートですみません。
向さんの4コマ愛と、小坂先生の真摯な姿勢が伝わる好イベントでした。第4回には参加できませんでしたが、また機会があったら参加したいです。