本格ミステリ09

 毎年恒例、本格ミステリ作家クラブによる、2009年本格短編ベストセレクション。


『しらみつぶしの時計』 法月綸太郎 
  同名の短編集で既読。ほとんどヒントが無い条件で、1分ずつ違う時間を示した1440個の時計の中から、正しい時刻を指している1個を選ぶと言う、極限の知的ゲーム。


『路上に放置されたパン屑の問題』 小林泰三
 日常の謎。ちょっと泡坂妻夫先生の『湖底のまつり』っぽい趣向もあり。解釈のバリエーションがあるのは楽しいですね。真相は、やや強引ですが。


『加速度ロンド』 麻耶雄嵩
 貴族探偵シリーズ。麻耶雄嵩らしいねじれた設定。人任せの名探偵。謎解きのロジックは見事です。


『ロビンソン』 柳広司
 スパイミステリ。『ジョーカーゲーム』で既読。昭和初期、イギリスで日本の諜報員が捕縛さる!彼は、いかに敵を欺き、敵地を逃れるか?


『空飛ぶ絨毯』 沢村浩輔
 北村薫の『空飛ぶ馬』を思わせるタイトル。やはり日常の謎かと思っていると・・・


『チェスター街の日』 柄刀一
 短編ならではのネタ。この作品のトリックは読めました。


『雷雨の庭で』 有栖川有栖
 『火村英生に捧げる犯罪』で既読。ブロードバンド時代のミステリー。


迷家の如き動くもの』 三津田信三
 民俗学ミステリ。昭和20年代〜30年代の、地方の村が舞台というところがユニーク。ただし、かなり無理があるトリックです。ちょっと人工的すぎて、くどいかな。


『二枚舌の掛軸』 乾くるみ
 遊び心に満ちた描写が楽しい作品ですが、事件自体は血なまぐさく、謎解きは実に端正なフーダニットになっています。いたずら好きの当主の思考が、実に本格ミステリー的なのも読みどころ。


『『モルグ街の殺人』はほんとうに元祖ミステリなのか?』 千野帽子
 評論。あまり興味が無いです。大昔から、犯罪あるところには、必ず捜査ありですし、捜査は、ある程度の論理性をはらむものですから、ミステリーの源流は、もっともっとさかのぼれるように思えます。