メルカトルかく語りき


メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)

メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)


 麻耶雄嵩の連作短編推理小説。超上級者向け。すれっからしのミステリ読者を翻弄します。読みやすいですが、『変』な推理小説
 「死人を起こす」 悪徳探偵が操る明らかなパラドックス。動機は何?
 「九州旅行」 このシリーズではおなじみですが、探偵と助手のモラルの欠如にかなり唖然。犯行計画の進行中に、探偵の介入の影響により、犯人が推理の裏をかくべく犯行計画を変更していく、というのが後期クイーン問題のひとつのパターンですが、犯行計画の進行中に、探偵自身が直接に犯行計画に影響を与えるべく手を下すというのは、なんとも新機軸。
 「収束」 シュレディンガーの猫と、倒叙推理小説の両立という、非常に高度でひねくれたアプローチ。
 「答えのない絵本」 短編ながら、容疑者なんと20人のフーダニット。消去法による推理が導くものとは?
 「密室荘」 もはや不条理小説。