俳優パズル

 パトリック・クエンティンの長編ミステリ。パズルシリーズ第2作。推理小説黄金期のアメリカ本格なれど、サスペンスにもやや傾斜。
 アルコール中毒も癒えて演劇界にカムバックした主人公。しかし、彼の再デビューの舞台には、頭を抱えるトラブルが次から次へと。
 演劇ミステリの傑作。作中作の台本もなかなかに興味深く、二転三転するプロットから、鮮やかな幕切れまで、演劇の喜びと悲しみが横溢しています。主人公とヒロインは苦悩しながらもラブラブなのですが、ドメスティックバイオレンスやストーカー化する夫など、戦前の作品なのに、破綻する夫婦の現代的風景も多く描かれていて、さすがニューヨークは先進的だなあと感心するとともに、周囲がこんな状況なのに、めげずに恋をする二人の勇敢さに打たれたりもしました。