コミックマーケット82

 青木俊直先生が、小坂俊史先生たち同志を募って、いしいひさいち先生の『バイトくん』トリビュート同人誌を発行するというので、コミケに買いに行きました。二次創作品になるので、コミティアでは買えないのです。
 事前にカタログチェックができなかったので、その他に買ってきた本は少なく、以下の通り。



『大好きバイトくん』
 執筆陣は、青木俊直いけだたかし内田春菊小坂俊史、近藤ゆたか、白佐木和馬、新保信長、タカモリケイ、竹田州史、田川滋、寺島令子寺田克也、戸田昭吾、目白花子、森雅之。表紙画はいしいひさいち先生によるもの。表紙の欠伸する3バカが、同人誌全体の基調テーマになっていて、各作家による同じポーズのバリエーションが楽しい。
 4コマ漫画業界よりはサブカル系がメイン。バイトくんをサブカル的に解体した作品多し。ゴキブリ擬人化が2作品。


「あおいほのを バイトはん」 寺島令子
 立命館大学漫画同好会における自伝的作品。東淀川大学でバイトくんが大学生活をしていたころ、寺島令子先生は立命館大学で女子大生をしていました。そして4コマデビュー。直接の面識はありませんが、ある意味、自らをいしいチルドレンと呼びます。いしいひさいち先生が興した4コマ漫画という新興産業に、青田買いされて就職したようなものでしょうか。たしか、寺島令子先生の名作『うどんランド』もプレイガイドジャーナル刊だったはず。昔のいしい先生の単行本には、よく『うどんランド』の広告が載っていたなあ。


「菊池くんと三宅さん」 小坂俊史
 小坂俊史によるバイトくんパスティーシュ2ページ。
 いしいひさいち先生の作品から、有名なオチを借りてきて、そのオチを基に、上の3コマを小坂先生がロジカルに組み直したという手の込んだ作品。普通の4コマ作品は、初読のオチがあるからこそ面白いのですが、この漫画の場合には、読者には既読のオチ、よく知っているオチのコマが来るからこそ、「あれとこれとを組み合わせたか!」という面白さがあります。すれっからしのいしい作品読者を想定した作品。
 いしい作品から4コマ目をペタリと貼り込み、自作の3コマと合体させているわけで、手法としてはコラージュとも言えるでしょうか。
 悪く言えば、オチの使い回しなのですが、いしい作品の場合、オチを使いまわした傑作『B型平次』のシリーズもありますし、この作品でも、オチの使い回しが、小坂先生のロジカルな作風をいっそう際立たせる結果になっていますから、必ずしも、使い回し=悪とならないところが、4コマ漫画の奥の深さでしょうか。
 絵柄については、いしい先生よりも、ややリアル寄りで、菊池くんの情けなさが際立っています。初期の作風を意識してか、セリフはふきだしではなく、斜めの効果線で表示されています。
 内容は、菊池くんと三宅さんのカップルについて、久保くんと三宅さん、鈴木くんと三宅さんが会話するというもの。この組み合わせの会話は、原作では極端に少ないはず。また、菊池くんと三宅さんの恋愛関係(!)に、久保、鈴木の両名が首を突っ込むということも、原作ではまずありえないシチュエーションです。菊池くんと三宅さんは、二人で料亭に行って、若狭ぐじの茶蕎麦蒸しを頼んだりはしていますが、原作では、恋愛感情の表現はほとんどありません。ですから、久保くんと会話して顔を赤らめる三宅さんは実に新鮮です。そのほかにも、菊池君の告白シーン(!)あり、二人の痴話喧嘩(!)ありと見どころが多いです。原作には、まずないシーンばかり。
 今回の2ページのパスティーシュを見るだけでも、1〜3コマ目で伏線をきちっと張る小坂先生と、奔放ないしい先生とのコントラストが、バチッと出るところが興味深いです。


「すきすきバイトくん」 内田春菊
 相変わらず、頭が柔らかいのか、脳軟化症なのか、よく分からない漫画。


「渡り中間くん」 近藤ゆたか
 時代劇で時代劇漫画をパロディに。『座頭市』も『十三人の刺客』もオールドバーション。


「Oh! バイトさん」 青木俊直
 三宅さん漫画。雇用主と被雇用者である藤原先生と三宅さんが、同級生なので混乱する。



『西日本オフ会 行ってきたよ山口』 両々王国
 佐藤両々先生たちによる紀行本。小坂俊史先生も寄稿。記憶スケッチでは、最新版の小坂のガンダムと、小坂のエヴァンゲリオンもあり。小坂のエヴァは、メタルグレイモンと見紛う衝撃の出来。


『んふんふ!』 CKC
 北条晶先生たちによるなめこ本。私はスマホは持っていないけど、DSで『おさわり探偵小沢里奈』シリーズはクリアしています。


『ここいちねんのたび』 Plastic Age
 王嶋環先生の紀行漫画。佐藤両々先生、橘紫夕先生との香港旅行編も収録。