ファミリー4コマ誌の連載作品における時間軸について
4コマ漫画における時間の進み方には、いくつかの分類ができます。
1.同じ年齢を何回〜何十回も繰り返し、歳をとらない。
(代表例:サザエさん、ののちゃん)
- 作者: 長谷川町子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2010/01
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ののちゃん 7―全集 (GHIBLI COMICS SPECIAL)
- 作者: いしいひさいち
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/04/21
- メディア: コミック
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2.サブキャラは(特に妊娠、出産、育児で)年を取るが、主人公は年を取らない。
(代表例:らいか・デイズ、ウチの場合は、ペエスケ、主人公が進学したがコボちゃんもこれに近い)
- 作者: むんこ
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2011/12/07
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- 作者: 森下 裕美
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
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- 作者: 植田まさし
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2012/02/07
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3.途中までは進級せず同じ学年を何度も繰り返すが、卒業にむけて、時間軸が動き出し、リアルタイムに近い進行になっていく
(代表例:Good Morning ティーチャー、サークルコレクション)
GoodMorningティーチャー 11巻(バンブーコミックス) (バンブー・コミックス)
- 作者: 重野なおき
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2009/07/27
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- 作者: 小坂俊史
- 出版社/メーカー: 竹書房
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4. 学校漫画で、途中までは、リアルタイムで生徒が入れ替わるが、ある時点から生徒が固定し、サザエさん時空になる。
(代表例:ここだけのふたり!)
- 作者: 森下裕美
- 出版社/メーカー: 双葉社
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5. 基本的にリアルタイムで時間が経過する。
(代表例:あずまんが大王、けいおん!、マジカルハンナちゃんを除く佐藤両々作品、幕張サボテンキャンパス、数学女子、MEDIGIRL)
あずまんが大王 3年生 (少年サンデーコミックススペシャル)
- 作者: あずまきよひこ
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- 作者: かきふらい
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- 作者: みずしな孝之
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- 作者: 安田まさえ
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リアルタイムで3年間の高校生活を描いて、大きな成功を残した作品といえば、「あずまんが大王」と「けいおん!」があげられます。これらの作品では、単行本4冊というボリュームで、高校生活3年間を描き上げ、過不足のない描写で、時間経過に伴うテンポ良い展開、進級や卒業がもたらす不可逆の寂しさなどを、リアルタイムならではの切なさを持って表現することに成功しました。日常という楽園を描く萌え4コマに、冷厳な時の歩みを対比させ、青春作品としての輝きを生みました。
しかし、これらの成功例を、そのままファミリー誌に持ち込むことは、困難です。それは、萌え系雑誌に比較して、ファミリー誌では1回の連載ページ数が少ないからです。
1回のページ数は4〜6ページ。この条件で高校生漫画を描こうとすると、1回のページ数を仮に6ページに固定できた場合でも、6ページ×36ヶ月=計216ページ。単行本1冊は110ページですから、卒業までを描いても、これで丁度単行本2冊にしかなりません。「あずまんが大王」や「けいおん!」の半分です。連載開始の時期が4月ごろからずれると、2冊分の原稿をそろえることも困難となります。
2誌連載を行えば、ファミリー誌でもページ数は稼げますが、リアルタイム性、ストーリー性の強い作品と、二誌連載との両立には、なかなか苦労が多そうです。
ファミリー誌の1誌連載で、リアルタイムの高校生ものを描く場合、きっちり2冊の単行本を出すためには、1年生の4月ごろから話を始めること、ページ数は月6ページをキープすること、という制約があります。なおかつ、その単行本、わずか2冊のなかで、きちんと描きたい高校生活を、描き尽くさなくてはなりません。なかなかに厳しい制約です。そのため、これまで作例が少なかったものと考えられます。
ファミリー誌において、リアルタイムで学園ものを描くということで言えば、大学を舞台にした作例がいくつかあります。こちらは4年間あるぶん、高校生漫画より多少の融通は利きそうです。
古くは「幕張サボテンキャンパス」。ただし、この作品も複数誌連載で苦労したようですし、あからさまな引き延ばし工作もしています。
現在連載中の学園漫画では、「数学女子」、「MEDIGIRL」がリアルタイムでの大学生活の描写に取り組んでいます。「数学女子」は2誌連載で単行本化が進行中。「MEDIGIRL」は1誌連載で単行本化を目指します。
さて、今月のまんがくらぶオリジナル2012年4月号ですが、リアルタイム4コマの雄、佐藤両々先生が、ついに「リアルタイム学園4コマ」として「はるまち・ダンス」の連載を開始されました。ファミリー誌におけるリアルタイム高校生活漫画の始まりです。
佐藤両々先生は、作中人物がリアルに年を取るタイプの4コマ漫画における、代表的な作家であり、これまでは、社会人の成長を描く4コマ作品を、数多く描かれてきました。社会人がリアルタイムに年を取ることのシビアさは、人生を背負う重さのようなものを、時に表現していたようにも思います。
ちょうど雑誌も4月号、リアルタイム学園漫画を始めるには最適なタイミングです。高校編だけだったら、おそらく単行本は2冊のみになるというストイックな試み。果たして当初の構想を描き切れるか。
ただし、大学、社会人まで行けば、さらに単行本3冊程度は期待できそうです。
また、近い時期に始まった、みずしな孝之先生の「ピンクそらりんご」も、ひょっとしたら、リアルタイムな展開を採用する可能性があります。そちらにも期待しておきましょう。
ファミリー誌ではまれな、リアルタイム高校生漫画は、どのような果実を結ぶのでしょうか。要注目です。