幼稚の園


 小坂俊史先生の4コマ漫画集。幼稚園漫画で、全1巻です。
 4歳児なのに、6歳児クラスに2つ飛び級して入ってきた、微妙な天才児、一条ルルちゃんと、やさしい友達の中島マコちゃん、アラスカから来たルルちゃんのライバル、アラスカちゃんこと北野アスカちゃん、面倒見のいい先生で、小坂漫画の準レギュラーキャラクター、木村めぐみ先生が活躍します。ラストから2本目の固定キャラクターは、1968年生まれの雅子先生。
 幼稚園漫画だと子供向けで、読み応えが無いかも、と心配する人がいるかも知れません。でも、ご安心ください。一条ルルちゃんは非常に口が達者なので、良く練りこまれたネームで読ませる、読み応えのある4コマ漫画集となっています。
 良い4コマ漫画集を評するのは、『面白い』の一言ですんでしまうので、難しいのですが、この作品も間違いなく『面白い』です。損はさせませんので、ぜひ買って読んでください。


 小坂俊史先生の日記にあるとおり、連載の早い時期から、全1巻とする予定が決まったようで、第4話でアラスカちゃんが登場すると、第5話以降は、怒涛の幼稚園行事ラッシュとなっています。
 行事を列記していくと、ピクニック、図書室、誕生会、プール、キャンプ、ごっこ遊び、運動会、劇、クリスマス、学級閉鎖、雪遊び、お弁当、お昼寝、最終回、となります。比較的短期の連載だからこそ実現できた、密度の濃さを堪能できます。
 このような行事ラッシュは、『サークルコレクション』を思わせるところがあります。


 先生の日記によると、「連載の一回ごとにテーマやイベントがあって、一回分5〜6ページをそれに沿って進めていくスタイルは、ひょっとするとこれが最後になるかもしれません。」とのことですが、個人的には、いつか、このようなスタイルの漫画も、復活させて欲しいと期待しています。
 このスタイルの漫画には、先ほど述べた『サークルコレクション』のほかに、『ひがわり娘』、『とびだせ漂流家族』、『サイダースファンクラブ』、一時期の『ハルコビヨリ』など、多数がありましたが、いずれも小坂先生でなければ描けないレベルの作品です。
 1本1本の4コマには、きちんとオチがあって、独立しているのに、1回の連載分を通読すると、そこに流れている、ゆるやかなストーリーが感じられるという作品は、なかなか他の作者では味わえないものです。
 このスタイルを手放すのは、あまりにも惜しいです。今は、現行の連載漫画が、長期連載となることを願っておりますが、いつかは、このスタイルでの新作も読んでみたいです。


 本のデザインで言うと、やはり著者の写真は見逃せません。ただし、著者近影では、ないんですよね。
 また、背の低い幼稚園児を効果的に見せるために、表紙と扉絵が、上方向への動きのある絵になっているのも、よく工夫されているなと感心しました。
 幼稚園児の飛び級という、一見あまり意味の無いような設定が、最終回の最終話になって生きてきて、爽やかな余韻を残すところも、よくできています。
 巻末付録は、『アラスカの国』。


幼稚の園 (まんがタイムコミックス)

幼稚の園 (まんがタイムコミックス)