4コマオブザイヤー2012に参加します
年末が近くなり、今年も八戸(hachinohe)さんのブログ(素晴らしい日々)で、4コマオブザイヤー2012の企画が、いよいよ始動しました。
その年に最も印象深かった4コマ漫画単行本について、みんなの投票を募り、集計していくという『素晴らしい日々』さんの恒例大型企画です。八戸(hachinohe)さん、毎年どうもご苦労様です。
参加はTwitterでもできますので、興味のある方、参加できる方は、ぜひ参加してみてください。締め切りは12月20日です。
私も、乏しい読書経験の中から、私なりのベストを挙げて、票を投じたいと思います。
4コマオブザイヤーには、新刊部門と既刊部門があります。
【新刊部門】
2011年12月1日以降から2012年11月30日までに発売された"1巻の"4コマ漫画単行本から5作品
5作品を選ぶのにあたって、ランキングをつける必要はありません。また、漫画の評価というものは、本来ランキングできるものでもないでしょう。しかし、このブログでは、あえてランキング形式を使って発表したいと思います。だって、そのほうが面白そうだから。
第5位 『だってあいちてる』 むんこ
- 作者: むんこ
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2012/10/06
- メディア: コミック
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単発ネタに見えたスピンオフ作品が、きちんと構成力を持って、単行本になるまで続けられるのも、むんこ先生の筆力があってこそ。
「わび」、「さび」を経て、「軽み」の境地に達しつつあるような、安直なセンチメンタリズムをブルドーザーで踏みつぶす豪胆さのある作家にして、初めてたどり着けるセンチメンタリズムの極致のような、不思議な作品です。
第4位 『野村24時』1巻 板倉梓
- 作者: 板倉 梓
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2011/12/17
- メディア: コミック
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板倉梓先生は可愛い絵柄ながら、ショートストーリー漫画では、日常の被覆をびりびりと剥がす非情さも持った、いわば羊の皮をかぶった狼。人生の酷薄さも知る人間が描く、安息の地の風景。あやうい均衡で成り立った、されど盤石のほのぼの世界です。出てくるのはみんないい人だけど、状況はある意味すごくシビア。
出版社の皆さんは、板倉梓先生という4コマ界に得難い才能を、どうか大切にしていただきたいと思います。具体的に言えば、『少女カフェ』2巻を出してください。お願いします。雑誌読んでなかったんだよ。
第3位 『マママのお仕事』 藤島じゅん
- 作者: 藤島じゅん
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2012/03/07
- メディア: コミック
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藤島じゅん先生のベストの仕事のひとつで、子育て漫画全体を見回してみても、おそらく最高傑作のひとつだと思います。ややマニアックな藤島作品のなかで、この作品は間口が広く、万人向け。もっと人気が爆発するべき。
重野なおき先生の『よんこまのこ』と併せて読むと面白さもひとしお。ともに大ヒットして、重野家を「おかねもち」に。
第2位 『崖っぷち天使マジカルハンナちゃん』1巻 佐藤両々
崖っぷち天使マジカルハンナちゃん ? (バンブーコミックス)
- 作者: 佐藤 両々
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2012/04/27
- メディア: コミック
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29歳OLが拾ったぬいぐるみは、魔法世界からの使者(ロリコンのど変態)でした。29歳OLはアラサー魔法少女に変身し、王子をさらった魔法使い(ど変態)を探して、なぜか罵倒合戦、変態対決の日々が始まります。まんがライフMOMO連載。
佐藤両々作品の中でも異色作、4コマ業界の中でも異色作、魔法少女ものの中でも異色作。遅々として進まない時間軸にみえて、実は結構シチュエーションがコロコロ動くのが見せどころ。
好き嫌いは別れるかもしれませんが、ツボにはまればとことんはまる爆発力を持っています。『魔法少女まどかマギカ』と並ぶ問題作。
(仮)メイド喫茶マンドリル 1 (バンブーコミックス WIN SELECTION)
- 作者: 碓井尻尾
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2012/06/07
- メディア: コミック
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祖父の喫茶店の経営を引き継いだ女子高生が、友達、後輩を巻き込んで、メイド喫茶として再生を図るのですが… 広がるのは女装とバイオレンスの荒野ばかり。オンラインコンテンツのまんがライフWIN連載。
現在の4コマ界で、もっとも勢いのある作家、碓井尻尾。今ひとつマイナーかとは思いますので、強く強くプッシュさせていただきます。この作品の初期作と新作は、現在もネットで読めます。(こちら。)暴走機関車のような、誰にも止められない勢いを感じ取ってください。これは凄いよ。
主人公の女子高生3人組は、4コマ界最強のキャラクターだと思います。物理的な意味で。多分『晴れのちシンデレラ』のハルさんとも互角に戦えます。
誰得コスプレ、誰得女装、姉による弟の虐待、地方色。碓井尻尾先生と佐藤両々先生の作風にはなぜか共通点が多いです。そのなかで、後輩の碓井先生が、大先輩の佐藤先生より上にいるランキングを、あえて作ってみたかったのです。よいライバルとなって下さいという願いを込めて。
【既刊部門】
2011年12月1日以降から2012年11月30日までに発売された"2巻以降"の4コマ漫画単行本から3作品
- 作者: 佐藤両々
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2012/10/06
- メディア: コミック
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おまけページからカバー下まで使って、漫画とキャラクターへの極限の愛を込めた大団円。
『そこぬけRPG』の終了は、今年の4コマ漫画における大きな事件でした。『そこぬけRPG』は、この10年の4コマ界を見回してみても、実に巨大な存在であったと思います。佐藤両々先生の代表作のひとつになることは間違いないでしょう。
また、ゲボキュー、カナさんという人物も、4コマ界全体のなかで傑出したキャラクターであったと言えるでしょう。二人に幸あれ。
ののちゃん 8―全集 (GHIBLI COMICS SPECIAL)
- 作者: いしいひさいち
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/03/21
- メディア: コミック
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単行本8巻の登場人物紹介は、なんと総勢56人+1匹。地方都市の一家族を活写するところからスタートしたこの漫画は、学校、地域社会、路上歌手、野球部、はては学級新聞のパラレルワールドまで広がって、空前絶後の大叙事詩となっています。舞台は「たまのの市」、岡山県玉野市がモデルです。
読者層が違うかもしれませんが、4コマ誌の愛読者の方々にも、ぜひその凄さを知ってほしい作品です。いしいひさいち先生は、今もなお4コマ漫画表現の最前線で戦っており、新たな表現の地平を、現在も切り拓いています。
価格は本体819円で、ページ数は367ページとお買い得。初期のバイトくん単行本を思わせる充実の厚さ。
第1位『せんせいになれません』8巻 小坂俊史
- 作者: 小坂俊史
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2012/10/06
- メディア: コミック
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登場人物の多さで言えば、この作品も相当なもの。6年生児童だけで80人ものキャラクターを描き分け、それぞれのキャラクターの性格、クラスでの立ち位置に至るまで、綿密な設定により、精密に描写しています。教職員を含めると総キャラクターは100人!
キャラクターよりもネタを重視した作風、学校内に舞台を限定した制約の中で、見事に各キャラが立っています。6年生児童のうち、8巻の本編に登場しなかったキャラは、表紙裏のおまけページで、一言ずつ台詞をもらっているのですが、このマイナーキャラたちにも、きちんと性格があり、どんな子なのか分かるという奥の深さ。
「面白さ」を重視し、現代を代表する「面白い」4コマだと思います。再読性が高く、何度読んでも、その都度面白いのも特色。個人的にこういう漫画を「スルメ度が高い」と表現しています。決して敷居は高くないので、8巻からでも楽しめます。
『ののちゃん』と『せんせいになれません』のどちらを1位にするか迷ったのですが、小坂俊史先生がいしいひさいち先生よりも上にいるランキングって面白いな、と思ったのでこちらを1位とさせていただきました。