ビッグコミックオリジナル2016年7月増刊号
ビッグコミックオリジナル2016年7月増刊号の感想
『まどいのよそじ』 小坂俊史
第16回 100円ショップ
40歳女性の部屋着と体型のリアルさ。しかし、そこが「素の私」を表現しています。
おそらく、100円ショップで買ったもの自体には、それほどの思い入れはないのでしょう。ただ、なんとかやりくりをして、どうにかしのいできた、これまでの人生の苦労を、経験を、工夫を、誇りを、象徴しているものが、100円ショップのグッズであるように思います。
主人公が、部屋の100円グッズを捨てるのは、古い自分を捨てて、輝かしい自分になろうとする思いから。しかし、古い自分も、一生懸命生きてきた自分であり、そこには、彼女なりの確かな誇りはあるわけで。
だから、それを、価値のないものとして叩き割ろうとする行為には、どうしても涙を流さざるを得ない。しかし、その経験は、古い自分を否定しない新しい自分への、出発点でもあると思うのです。