元禄の雪


元禄の雪 (白狐魔記)

元禄の雪 (白狐魔記)


 斉藤洋の児童文学。白狐魔記シリーズ最新刊。
 500年を生きる狐の目で見た忠臣蔵
 例えば、参勤交代というのは、それ自体は意味のない公共事業で、ピラミッドを立てるとか、将軍様の巨像を作るとか、エンジンのない車を作ってスクラップにするとか、シーシュポスの石とか、つまりはそういうもの。
 そういったバカげた仕組みに縛られ、サラリーマン化した武士の世界。戦国時代ならば手柄を立てれば、領地が増やせたけれど、領土が増えない江戸時代では、武士は領地没収に怯えるのみ。狐から見た武士は滑稽ながら、その姿には、現代にも通じる閉塞感を感じて、共感を覚えます。
 忠臣蔵を冷徹に描いた比較的おとなしい作品かと思っていると、最後にその意味を根底から問い直す展開が待っています。狐の酔狂ここに極まる。