シートン(探偵)動物記

 柳広司の連作短編集。タイトルどおり、シートン動物記を下敷きにしたミステリーです。
 新聞記者の「わたし」が、老シートンから、若い頃の謎解き話を聞きだすというストーリー。シートンが名探偵だったという設定です。
 名探偵自身が語り手になる歴史ミステリーとして、岡本綺堂の『半七捕物帳』や、エドワード・D. ホックの『サム・ホーソーンの事件簿』に近い形式ですね。
 謎解きに結びつく動物達の生態も興味深いのですが、事件の背景となる19世紀〜20世紀のイギリス、アメリカの風俗も、とても面白く活写されています。
 本格ミステリーとしても、シートン動物記のパロディとしても、非常に高水準な傑作です。
 『カランポーの悪魔』と『熊王ジャック』は既読でした。確か年間ベストを集めたアンソロジーでだったと思います。


シートン(探偵)動物記 (光文社文庫)

シートン(探偵)動物記 (光文社文庫)