ヴァン・ショーをあなたに

　近藤史恵のビストロ・パ・マル・シリーズ第二作。小さなフレンチレストランを舞台にした、おいしい料理と、ちょっとした謎解きの連作短編集。とても読みやすくて、味付けはやや薄めながら、その味はとても確かです。
　冒頭の猫の話が印象的な「錆びないスキレット」、ベジタリアンに合わせたメニューの工夫が読みどころの「憂さばらしのビストゥ」、本格的なパン店の立ち上げに協力する人情話「ブーランジュリーのメロンパン」、ブイヤベースがとにかく美味しそうで、三舟シェフの思わぬ一面がのぞく「マドモアゼル・ブイヤベースにご用心」、視点が変わったラブストーリー「氷姫」、傷心の女性がフランスのレストラン（トリュフオムレツが絶品）で同席したのは修行時代の三舟シェフだった「天空の泉」、絶品のヴァン・ショー（ホットワイン）をおばあさんが作らなくなったのは何故か「ヴァン・ショーをあなたに」の７作。
　ビストロ・パ・マルが実在したら、絶対に行ってみたい、と思わせる魅力があります。

ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)