ビッグコミックオリジナル2015年5月20日号

ビッグコミックオリジナル2015年5月20日号の感想
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『まどいのよそじ』 小坂俊史

特別編6 備えあれば
 北関東ラビッツの40歳、永井選手のエピソード再び。前回の関心事はホームランでしたが、2軍暮らしが続き、今回の関心事は、来年以降の去就へと変化。
 今後の去就に備えて採った行動が、玉突きのように、自分を1軍に押し出していくという、風が吹けば桶屋が儲かる的な物語となりました。
 なお、かつてビッグコミック増刊で連載されていた『からぶり魂』のイチリョー選手は、いまだにレギュラーで、「去年はよく打った」模様。
 腐る若手が、草田(くさった)と常口(つげぐち)、無能な守備コーチが小星(こぼし)というストレートなネーミング。
 無能な守備コーチに代わって若手育成の実績を作り、首脳陣にアピールを、と考えましたが、貧打にあえぐ1軍で必要としているのは打撃力。せっかく送り込んだ若手も、打撃のみが注目される結果に。
 かくして、守備コーチとしてのアピールには失敗しましたが、チームに打撃力が加わったことで、思いもかけず、1軍に守備要員のニーズが発生。
 次こそは、自分が育てた若手を送り込んで、守備力向上への指導力をアピールするチャンス。しかし、召集されたのは自分。なるほど、どう考えても、若手よりも自分のほうが、はるかに守備は上手い。
 永井選手が考えたことは、来シーズンに2軍守備コーチの後釜になることだけだったのに、結果として、今シーズンの1軍の戦力強化という大きな影響が生じることとなりました。2軍選手のセコい打算が、1軍の戦力構成の流れを変えてしまうという痛快さ。さらに、本人にはまるでその自覚が無いという面白さ。
 とは言え、どのように転んでも、それなりの結果を掴み取ってしまうというのは、永井選手がそれだけの実力者であればこそなのでしょう。