硝子のハンマー


硝子のハンマー (角川文庫)

硝子のハンマー (角川文庫)


 貴志祐介の長編推理小説
 TVドラマ『鍵のかかった部屋』を全く見ていなかったことを後悔した傑作。原作シリーズを読み終わったら、DVDをレンタルしようか。
 現代の防犯設備を綿密に取材した、21世紀における密室殺人。セキュリティーが強化されたビルの社長室での殺人です。弁護士とセキュリティースペシャリストが謎に挑みます。
 繰り返される仮説のトライアル&エラー。依頼人の冤罪を晴らす天然ボケの弁護士という構図は、ゲーム『逆転裁判』につながるところもあり。ハウダニットをとことん突き詰めることで、フーダニットに通じていきます。この殺人方法ならば、この犯人しかいないし、この犯人ならば、この殺人方法しかない。真相には見事な調和と必然性が感じられます。なるほど、この犯人ならば、これだけの手間をかけるかもしれない。
 ミステリーの名作の中には、トリックは忘れるが犯人は覚えているもの(アガサ・クリスティー作品とか)と、犯人は忘れるがトリックは覚えているもの(ホームズものとか)がありますが、この作品は犯人もトリックも記憶に強く刻み込まれるでしょう。忘れえぬ作品です。
 目次を読んだときに誰しもが「あれ?」と思うでしょうが、前半からは予想のつかない後半となっています。