トーキョープリズン

 柳広司の長編推理小説
 敗戦後の巣鴨プリズンを主要な舞台にした歴史ミステリーです。ニュージーランド人の私立探偵フェアフィールドと、捕虜虐殺の容疑で収監されているキジマが、プリズン内の毒殺事件の謎、キジマ自身の戦犯容疑の謎に挑みます。キジマは、神のごとき名探偵ですが、戦時中の記憶を失っています。
 内容は、やや詰め込みすぎの観があり、展開にご都合主義的な部分も多少ありますが、重いテーマに十分に向き合っています。キジマがストレートに謎を解くわけではなくて、終盤には、ツイストの効いた展開が待っています。このあたりの読み応えは、さすがです。
 エドワード・フェアフィールド(E・F氏)の手記に基づく小説、という体裁をとっているところも、柳広司らしいですね。


トーキョー・プリズン (角川文庫)

トーキョー・プリズン (角川文庫)