ジョーカー・ゲーム

　日本陸軍に設置された架空のスパイ養成機関「Ｄ機関」を軸に展開する、柳広司の連作スパイミステリ。
　「Ｄ機関」を率いるのは、魔王と呼ばれる結城大佐。第二次大戦前夜の情報戦、軍国主義とは、価値観に一線を画したＤ機関のスパイたちは、日本で、ロンドンで、上海で、したたかに戦い、成果をおさめます。

　Ｄ機関の設立に関わった陸軍からの出向者の視点で描かれる「ジョーカー・ゲーム」
　ターゲットがシロであることを証明せよ「幽霊　ゴースト」
　敵地より脱出せよ「ロビンソン」
　上海の熱気に翻弄される憲兵の視点で描かれる「魔都」
　陸軍出身者のスパイが生き方を決する、本格ミステリ「ＸＸ　ダブル・クロス」

　時代背景はリアルですが、Ｄ機関のスパイたちの能力は、ほとんど常軌を逸しており、その働きは、あたかも山田風太郎の忍法帳を見ているかのようです。いくつかの作品では、一般人に近い、陸軍の軍人たちのほうに、むしろ親近感を感じます。そして、語り口はクールでドライ、短編の傾向はバラエティに富んでいて、なるほど、これは一級のエンタテインメント作品です。

ジョーカー・ゲーム