寒椿ゆれる

 近藤史恵の時代ミステリ連作。猿若町捕物帳シリーズの最新作。
 主人公の同心、堅物だけど顔は広い玉島千陰、三十四歳独身。千陰の配下で、語り手となる八十吉。千陰の父の通人、千次郎。千次郎の妻で、千陰の義母に当たる、十八歳!のお駒(妊娠中)。ライバルの同心、大石新三郎。江戸で人気の女形、水木巴之丞。巴之丞と瓜二つの美貌の花魁、なぜか千陰に起請を渡している、梅が枝。千陰の見合い相手、見合い回数43回、変わり者だけど、自分に正直、観察眼が鋭くて算術に強い、おろく。多彩なレギュラーキャラクターが固まってきて、楽しくなってきました。
 お駒さんの出産もまだ、ということで、まだまだ続くのでしょう。続きが楽しみです。
「猪鍋」 人気の猪鍋屋に相次ぐ事件。その裏には。
清姫」 巴之丞刺される。その意外な動機とは。歌舞伎ミステリも得意とする近藤史恵の本領発揮。
「寒椿」 両替商への強盗事件。そして、不穏な噂。奥手同士のラブストーリーでもあります。朴念仁なんだか、人情の機微に通じているんだか、よくわからない千陰が魅力的です。彼は萌えキャラですね。


寒椿ゆれる―猿若町捕物帳

寒椿ゆれる―猿若町捕物帳