ビッグコミックオリジナル2015年1月5日号

ビッグコミックオリジナル2015年1月5日号の感想

『まどいのよそじ』 小坂俊史

特別編4 占い
 仕事なし、貯金なし、彼氏なしの40歳、という主人公の境遇は、シビアなようではありますが、借金があるわけでも、DVをふるう夫がいるわけでもありません。見かたによっては、プラスもマイナスもないゼロの状態、ニュートラルの状態と考えることが出来るでしょう。
 「この話ってハッピーエンドなの?」と思う人もいるでしょうが、ゼロの状態から、どこかへ踏み出せたというだけでも、ポジティブな意味はあるように思います。もともとは失うものは何も無かったわけですから、最近に手に入れたものを捨てるのには、それほどの未練は無かったのかもしれません。
 また、この話は、「占い」というカバーを外してみると、「あるジャンルの作品にハマったファンが、粗雑な製作現場に失望し、自らクリエイターを目指すまで」という骨格を持っています。古典的なエンターテインメントとしての要素を持つ骨組みの上に、肉付けを施しているのです。


 しかし、このネタは、竹書房の雑誌では出来なかったなあ。あちらの4コマ漫画雑誌は、けっこう占いページに熱心だから。特に『まんがライフ』は。
 『まんがライフ』の占いページは、大橋つよし先生の描き下ろしイラストが毎回付いた豪華なもの。さらに、内容は『1/7午後は「卵から生まれる子」とつぶやけば活力がわいてきます』 などと非常にシュール。一方、ビッグコミックオリジナルには占いページが無いから安心です。


 個人的には占いは全く信じていませんが、宗教と違って、こちらで避けていれば、こちらのテリトリーに土足で踏み込んで来ることはありませんので、宗教ほどの嫌悪感は覚えていません。
 占いの結果が、偶然と有意な差があるかについて、統計的に検定するのは容易でしょう。しかし、誰もしようとしないというのは、信じない人には全く自明であるため、あえて行うメリットが無いからでしょうね。例えば、複数のタロット占い師に全く同じことを占わせて、引いたカードと向きの分布を調べるだけでもいいわけですが。
 商売としてみた場合、対面の占いと雑誌の占いでは、ノウハウが違うのでしょう。ただし、対面の占いで名前を売らないと、雑誌の占いには声がかからないのかもしれません(駄洒落)。
 対面の占いは、基本的にコミュニケーションを売っているわけですから、当たるか当たらないかということよりも、話芸のほうが大事なのでしょう。ただし、対面の占い師も、相談に乗っているだけなら比較的無害なのですが、開運とか供養とか、次のビジネスのステージに進行するとやっかいです。
 雑誌の占いを本物の占い師が担当する場合に、どのくらいの報酬が出るのかは知りませんが、かなり息の長い収入にはなりそうです。占いが不人気で10週で打ち切り、とかはありませんから、大幅な雑誌のリニューアルまでは安泰という意味で。


 クールな主人公に占いを信じ込ませるために、クールな作者は、4ページを使い、8つの的中を重ねました。本人が信じてないだけに、星占い、おみくじ、九星気学、血液型占い、星占い、星占い、血液型占いと、念入りに畳み掛けたという印象。
 ファミレスでマジ喧嘩する大人げないアラフォーたち。
 『職求ZIN』のキャッチコピー「SHOCK YOU」がクール。
 338ページ下の3コマでの表情はどんな?
 339ページからの、暗黒 → 後光 → 灯光 という流れ。