サム・ホーソーンの事件簿VI

 エドワード・D・ホックの連作短編集。作者の死去により、本巻が最終巻。ホーソーン医師と、このようなかたちでお別れするとは。残念です。
 老医師ホーソーンが、思い出話を語るという体裁でつづられる本格ミステリ1920年代から始まった話も、1話ごとに時間が進み、本巻では太平洋戦争の時代が舞台に。アメリカの田舎町から見た太平洋戦争のありようが新鮮です。例えば、ホーソーン医師の新婚旅行は、真珠湾攻撃のニュースを受けて中止になったりしています。戦争の影は色濃く、やっぱりアメリカも戦時下だったのだなあと思わせます。
 ミステリとしては、技巧派職人の熟達の技といったところ。事件はどれも不可能犯罪。わりと見え見えの伏線を張っておきながら、うまく真相をカモフラージュしています。