電子貸本Renta! 『サークルコレクション』

 昨年から、竹書房の4コマ漫画の単行本の一部が、電子貸本Renta!でレンタルされるようになりました。サイトはこちら。
 レンタル対象となるのは、数年前に完結しており、現在、書店や通販で新品を入手することが難しくなった作品群のようです。今年になって、小坂俊史先生の『月刊フリップ編集日誌』、『とびだせ漂流家族』、『サークルコレクション』がラインナップに加わりました。


 ファンとしては、好きな単行本は、紙の単行本のかたちで、ロングセラーとして増刷が続き、いつまでも流通し続けてほしい、と願うものですが、完結した作品は、本屋の棚から消えやすく、入手が難しくなっていくのも事実です。ですから、こういった形でレンタルされる意義は、多少はあるかな、と思います。本心を言えば、レンタルでなく、ダウンロード販売をしてくれたほうが、もっとありがたいのですが。
 新品の入手が困難な単行本の場合、これまでは古本で買うしかありませんでしたが、それでは作者に印税が入りません。デジタルデータのレンタルでは、作者に印税が入るであろうメリットが大きいです。ただし、いでえいじ先生の日記によると、作者はレンタルの印税のことは聞かされていないようですが。ソースはこちら。ちょっと心配。


 小坂先生の単行本は、すべて揃えてあるのですが、ものは試しと、『月刊フリップ編集日誌』、『とびだせ漂流家族』、『サークルコレクション』をレンタルしてみました。
 これを機会に、未読の方のために、これらの作品の紹介をしていきたいと思っています。今回は『サークルコレクション』をご紹介します。残りの作品は、また後日。
 なお、レンタル料金は、48時間100円、1年間300円です。セブンイレブンコピー機で買えるwebmoneyでも、支払い可能です。また、基本的に、レンタル作の冒頭の数ページは、無料で立ち読みができるシステムとなっていますので、気になった方は是非。

『サークルコレクション』 小坂俊史

 大学生サークル4コマ。全2巻。
 舞台は西条大学。この大学のウリは、変なサークルが、いっぱいあることです。サークル棟には、でんぐり返り同好会、もちつき同好会、ひょっとこ研究会、干し柿同好会、きつねうどん研究会、ただめし同好会など、珍妙なサークルが、山ほど詰まっています。
 主人公は、部員5人の弱小サークル、児童文学研究会の部長の友沢和文です。彼は、『サイダースファンクラブ』のむつきの弟かもしれません。愛すべき小人物で、サークルでただ一人、児童文学を研究しています。
 児童文学研究会には、彼のほかに、腹黒く計算高い副部長、石野、寡黙で高性能で役立たずの曽我、ヤンキーで石野のパシリの矢野、子供ルックスのボケ担当、井上と、多彩なメンバーがいます。


 この作品の魅力のひとつは、大学生活の空気感をよく表している青春漫画であることです。サークル棟で無為に過ごすダラダラ感、試験の前の焦燥感、学園祭の前の高揚感などが、うまく再現されています。物語の中盤までは、主人公は永遠の大学3年生で、モラトリアム漫画としても優れていました。
 この作品では、1話で1つのイベントを描くスタイルをとっています。新入生勧誘、学園祭、合宿は、恒例の大イベントです。途中までは磯野時空だったので、大学3年生での学園祭が、なんと4回も繰り返されています。中盤までは、呑気な大学生活がいつまでも続くような幸福感が味わえます。
 空気感を再現した大学生漫画ということで、いしいひさいち先生の『バイトくん』の正統な後継者と呼べるのかもしれません。そういえば、バイトくんも、ギリシア問題研究会というサークルに入っていましたね。そういった縁もあってか、単行本2巻の帯には、いしいひさいち先生の推薦文が付いていました。この帯は、残念ながらレンタル版では見ることができません。


 前に挙げたとおり、珍妙なサークルのオンパレードも、本作の楽しみどころです。登場するサークルは、名前だけのものも含めると膨大な数にのぼります。馬鹿馬鹿しいサークルばかり。まさにサークルコレクション。
 なお、登場するサークルの集計は、小坂俊史先生のファンサイト『がんばれ小坂俊史』(こちら)の「リサーチ!!小坂俊史」のページ(こちら)にまとめられています。
 おまけページのサークル紹介記事、「サークルピックアップ」も、とても面白いです。


 さらに、本作が青春漫画として特に優れているのは、物語の終盤、友沢たちが磯野時空を脱して、4年生に進級し、就職活動をする姿が描かれている点です。
 進級試験の苦闘、就職活動の苦戦は、経験者ならば、胃が痛くなる思いで読むことになります。でも、大学生活を描き出すときに、試験、就職活動、その後の進路は、避けて通れない課題だと思います。
 小坂先生は、主人公たちを、永遠の大学3年生という楽園に閉じ込めておかないで、就職活動の荒波に送り出しました。その逃げない姿勢は、高く評価されるべきです。そして、友沢部長の大学卒業後の進路は、小坂先生の歩みと重なって、感慨深いです。


 文化系大学生サークル漫画という異色なジャンルで、確かな成果を示した力作です。興味のある方は、電子貸本Renta!(こちら。)まで。冒頭の立ち読みもできます。


サークルコレクション 1 (バンブー・コミックス)

サークルコレクション 1 (バンブー・コミックス)