今月のまんがくらぶ

まんがくらぶ2009年1月号の感想


表紙:1月号なのに、テーマはクリスマス。まあ12月27日には、来月号が発売になりますし、新年ネタは、その時に、ということでしょう。有馬母、草津母がそろって生足披露。先月号に続き、どんだけお色気担当なのかと。有馬母は寒そうです。


『天使の事情』 神仙寺瑛
 父母職員がコスプレして、クリスマス会。乳幼児がコスプレしてクリスマス会というのは、過去にありましたから、今年は趣向を変えましたね。11ヵ月児が出てくる漫画で、今年は、というのも変な話ですが。
 「けっこうでかいな」 「胸去年よりきついわ、えへ、バストアップしたかな。どー思う?」 去年のクリスマスには有馬君たち生まれてませんから。


『うちは寿』 小池恵子
 普段は、長女万里(32歳)の視点がメインですが、今回はかめ(80歳)と千宏(7歳)の視線がメインの話になっています。ひとつの漫画に、老人目線と子供目線が混じっているのは、珍しいし、面白いですね。
 「千宏日記」 悪行:わるい行い。悪事。不品行。(広辞苑より)、消しゴムで消すほど悪い意味はなさそうですが。


『女子高生沙奈ちゃん』 たかの宗美
 『有閑みわさん』からのスピンアウト作品。旦那に横恋慕する女子高生メインの話。
 非たかの宗美ファンからみると、せっかくのスピンアウトなのに、女子高生のキャラクターに魅力がないなあと感じます。設定が服を着て歩いているだけで、キャラクターのディティールの描き込みがみられず、深みがないというか。
 おそらく、たかの先生自身、キャラクターの内面などには、あまり興味がないんでしょうね。キャラよりネタで勝負したいタイプとみました。


『せんせいになれません』 小坂俊史
 120時間目。正式連載になってから、まる10年です。おめでとうございます。これからも頑張ってください。
 タイトルバック:屋根の上からこんばんは。池田が落下しています。
 「くやしい正解」 溝渕君が賢い。この着眼点と計算力は、スーパー小学生です。さすがはヒーローと呼ばれた男。
 「冬のひとり酒」 わびしいタイトル。シャンメリーの話になごむ6年2組女子がかわいいです。ちなみにシャンメリーについて調べると…
 ― 「シャンメリー」という名称はシャンパンの「シャン」とメリークリスマスの「メリー」を語源としている。全国シャンメリー協同組合の登録商標であり、商標としてこの名称を使用するには同組合の許諾が必要である。― (Wikipediaより)
 戦後の発売当初は、ソフトシャンパンと呼ばれていましたが、フランスからの抗議で、シャンパンという単語の使用をやめて、1973年からシャンメリーという名称になったそうです。また、大手飲料メーカーでは製造されておらず、もっぱら中小飲料メーカーの製品となっているのは、「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」によって、この分野への大企業の進出が阻まれているためのようです。
 「電機店直行」 タイトル落ち。脚が折れなかったら、コタツから出ずに、池田の治療をするつもりだったのでしょうか。
 「おれのバイブル」 『まんが日本の歴史』は、ものによっては、侮るべからずです。人物中心でない、きちんとしたものならば、大学入試の基礎レベルまで対応できます。あと、『まんが教育指導』は、さすがに無いようですが、検索してみたら、『Dr.椎名の教育的指導!!』という漫画ならあるみたいです。椎名高志の4コマ漫画。面白そうだな、今度読んでみよう。
 「ちょっとパチってくるわ」 大掃除の後にわざわざ反省会。真面目な生徒達です。でも、大掃除に河田がいても、大して戦力にはならないと思います。先生がいなくても、大掃除を終えられるというところが、6年2組の優秀さを示していますね。これも河田の教育の成果なのかな。
 「いますぐたべたい」 危険なタイトル。動物愛護に奔走する丸木さんと宮本さん。野良犬もいたんだ。「いのちの授業」をやっても、この二人だったら、食べることができないで、飼い続けるんじゃないかな。
 「そのまま埋もれていろ」 「グラウンドいっぱいに石灰で描いたエロ落書き」 どんなものか見てみたいです。新任教師たちのあまりの振る舞いに、奇矯な行動を取らざるを得ない、藤田先生が気の毒です。
 「年末の女の子」 自腹で高い金を出して、お琴を買う和泉先生。ある意味で、立派です。「春の海」は、とんねるずの「食わず嫌い王」の冒頭で流れるあれですね。一応動画を↓。盲目の音楽家、宮城道雄が1929年に作曲した作品だそうです。古典じゃないんだ。
 


追記:昭和初期を舞台にした北村薫先生の連作推理小説集『玻璃の天』のなかの「想夫恋」にも、この「春の海」のことが述べられています。長くなりますが、引用しましょう。


「宮城先生といえば、―『春の海』は御存じでしょう」
「ええ」
 さすがに、これは知っている。去年、随分と話題になった曲だ。
《ヴァイオリンの女王》という触れ込みで来日した、フランスの演奏家、ルネ・シュメー女史が、この曲を聴き、すっかり気に入ってしまった。彼女は単なる聞き手にとどまってはいなかった。《弾いてみたい》と血が騒いだのだ。尺八のパートをヴァイオリンに編曲し、最後の演奏会で宮城道雄と共演した。
 珍しいことだから、随分と話題にもなったし、演奏の評判もよかった。その後、ビクターから出た、二人の弾く『春の海』は、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも売り出されたという。
「あれもね、シュメーが一緒に弾いてから、皆なが騒ぎだしたのよ。それまでは、格別、評判にもならなかった。《日本人の西洋崇拝のせいで、曲に箔が付いた》といえば、ことは簡単だけど、実際はね、《皆の眼から鱗が落ちた》という方が、正しいのよ。第一、シュメーが感動したのよ。どうしても、一緒に弾いてみたいと思わせるものが、曲の内にあったんだわ。だからこそ、ああいうことになったのよ。」
「ひょっとして、― 演奏会にいらしたの?」
「ええ、― 日比谷公会堂
 これは、行かない方がおかしいのだろう。門外漢でも《シュメー告別演奏会》の噂を知っている。新聞小説にも、その晩のことが取り上げられたくらいだ。お箏の世界の人にとっては、一大事件に違いない。
「― 羨ましいわ」
《その時》というのは、ただ一度だけ。後から駆けつけるわけにはいかない。綾乃さんの話を聞いていると、釣り逃がした魚がいかにも大きく思える。
「前半はシュメーの演奏。タルティーニのト短調から始まった。― それは力強いものだったわ。― 休憩の後、幕が開くと、舞台には輝くような金屏風。その前にね、羽織姿の宮城先生と、黒いドレスのシュメーが現れたの。女のシュメーが大きくて、お箏の前の宮城先生は可愛らしいくらいに小さい。でも、曲が始まると、二人は生身の体を離れた調べになって、宙に浮かんで、それは楽しそうに遊んでいた。― とても不思議な気持ちがしたわ。日本の音楽家とフランスの音楽家よ。どれだけの山や波が、間を隔てていることかしら。間には、海もあれば砂漠もある。それはもう気が遠くなるくらいに遠い。時代が少し前だったら、お互いの国があることさえ分からなかった。― 会う筈のない二人なのよ。それなのに、どういう神様のお考えでか、宮城先生とシュメーは、こうして心を寄り添わせて、ひとつの音楽を共有していらっしゃる。誰も踏み込めない、輝くようなお庭にいて、顔を見合せていらっしゃる。― それを思うと、席に座ったまま、何だかふうっと気が遠くなりそうだったわ」 


玻璃の天

玻璃の天


 「続・年末の女の子」 前作とシンメトリーな作品。調理実習でクリスマスケーキは無謀なような気がします。もちつきのほうが現実的です。杵だけ持って登校したのでしょうか。臼はどこから調達? ぺったんぺったん、という擬音がなつかしいです。『サークルコレクション』で、もちつき同好会が合宿をするネタがありましたね。
 「クリスマスだ!! 桃山」 先生思いの桃山。ベクトルは、ずれていますが。
 「唯一ほめられた」 古賀君の父親って、以前通知表の2.5に怒った怖いオヤジですよね。古賀君の帰宅後が心配です。


猫びよりヒルネちゃん』 智
 全体に、もう少し読み応えが欲しいところです。


ひよわーるど』 橘紫夕
 守屋さんの文語体しゃべりと、独特な擬音が楽しいです。
 「ういさー」「どぼん」「ちりーん」とか、リズムがあって面白いですね。
 なっちゃんは大家族。だから、しっかりしているのか。子守りから料理まで大変です。


『おたやん』 古川紀子
 次回最終回。ほっぺたネタだけで、よくここまで続けてきたものです。ご苦労様です。ぜひ、間をあけずに次回作を読ませてください。
 最終回では、5年後が描かれるのかなあ。


『ノンストップおヨメ道』 柘植文
 安来節どじょうすくいに挑戦。扮装に寛永通宝を使うんですね。珍しく、生徒さん達に褒められていると思ったら、増量ニセ者キャラでしたか。


『まろやか姉さん』 帝国少年
 3ヵ月連続ゲストのショートストーリー。絵はとても達者だけど、漫画はまだまだ下手、という感じ。展開とか、構図とか、ネームとか、テクニックがない印象です。3ヵ月で、どれだけ成長するか、楽しみにしています。


ゆるめいつ』 saxyun
 ノリツッコマズが炸裂。突っ込み不在のまま、クリスマスは暴走を続け、シュールな落ちへと続きます。問題作。


マーメイドブルース』 小池田マヤ
 ターコってオスだったのか。


『うたうめ』 安田弘之
 4ページとは短い。増ページをお願いします。8ページある漫画を削って。『お一人様二つまで!』とか、『お一人様二つまで!』とか、『お一人様二つまで!』とか。
 「ブームのあれ」 ブームじゃなきゃ微罪なのに、ブームだと全国に実名報道されますからね。


『お一人様二つまで!』 内田春菊
 この漫画が続くことは、作者にとっても、読者にとっても、雑誌にとっても、マイナスです。即刻終了しましょう。


『ヘルパーライフ』 魔神ぐり子
 「セクハラ」 すりつぶすわよ。
 「黒」 質問にタイトルで答えています。男の子と女の子の双子というのは、今後の展開への伏線でしょうか。


『いっしょにすもお』 藤枝奈己絵
 3ヵ月連続ゲスト。正直、漫画の教科書的に見ると、問題の多い作品だと思います。キャラクターの掘り下げは足りないし、4コマ目で落ちていないし、部屋の中とかの背景も、描写が不十分で舞台がよくわからないし。でも、不思議な面白さがあります。落語家で例えると「フラがある」という感じ。


『そうだ!会社に行こう』 そにしけんじ
 次回最終回。レギュラーキャラクターも増えてきて、これからだと思っていたのに。次回作を期待しています。


『アパートの部屋貸します』 秋吉由美子
 最終回。この作品も、これからの展開が楽しみだったのに、残念です。まだ、話を膨らませる余地は、いっぱいあったと思うのになあ。


総評:
 先月、今月、来月と終了する漫画が多いです。
 味岡前編集長の、サブカル路線、メディアミックス路線は、あまり成功しませんでした。かつてサブカルで活躍した漫画家に、往事の実力がなかったのが、その一因だと思います。その代表選手が内田春菊先生ですが。
 編集長が松本氏に代わって、路線変更を試みているようですが、いまひとつ方針がわかりません。
 外から作家を連れてきての新連載、『猫びよりヒルネちゃん』と『桜色デイズ』が、いまひとつパワー不足で、路線的に、あまりにもライトです。これならば、実績のある中堅作家を、もっと厚遇すべきでは、と思えます。少なくとも、秋吉由美子先生、そにしけんじ先生、古川紀子先生には、時間をおかず、新作を描いていただくべきと考えます。


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