完全恋愛

 牧薩次の長編推理小説。牧薩次は、ベテラン推理作家、辻真先の変名(ポテト&スーパーのポテト)。
 ひとりの芸術家の生涯を描きながら、東京大空襲から現代まで、昭和20年から平成19年までを、昭和史を活写しながら綴る3つの殺人。同時代を生きてきた作家ならではの臨場感があります。こんなふうに昭和を描ける作家は、今後少なくなるかもしれません。
 トリックは大胆。多少無理あり。それは辻真先の作品だから当然。ただし、この小説は、その先に、人生そのものが、ひとつの謎であるという感慨を、読者に持たせる点が、優れています。


完全恋愛

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