この世界の片隅に(上)

 こうの史代先生の新作。広島と呉を舞台にして、少女の成長と結婚を描いた作品です。
 今回の(上)で描かれるのは、昭和9年から昭和19年まで。戦時下の風俗は描かれていますが、キャラクターはおっとりとしていて、流れる空気は暖かなものです。「鬼イチャン」をはじめとして、こうの先生独特のユーモアに満ちています。
 しかし、昭和20年になれば、呉では大空襲があり、広島では原爆の投下があります。登場人物たちは、まだ、そのような運命を知る由もありません。
 こうの先生のような若い漫画家が、この時代を描くためには、相当の取材を行われたことと思います。しかし、作品はあくまでも穏やかで、そのような苦労を感じさせません。
 過酷な運命を予感しながらも、続刊を待たずにはいられない作品です。

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)