千年の黙

紫式部が探偵役を務める歴史推理小説。3部構成になっています。
歴史小説といっても、ぜんぜん堅苦しくはなく、少女あてきが活躍して、消えた猫の謎を追う序盤は、いきいきとしたジュブナイル小説のようです。そして、物語が進むにしたがって、大きな歴史のうねりを感じさせる、深い印象を与える作品となっていきます。
源氏物語には、失われた一部があったとする説があります。誰が何のために奪ったのか。これが後半の主要な謎となります。この小説では、フーダニットについては、ある程度ネタを割っておくことで、ホワイダニットに焦点をあてるという心憎い構成をとっています。
終盤は特に衝撃的で、ここまで作品に打ちのめされたのは、個人的には、宮部みゆきの「火車」以来でした。
おすすめします。

千年の黙―異本源氏物語

千年の黙―異本源氏物語