獅子真鍮の虫

 田中啓文の連作ジャズミステリー。永見緋太郎シリーズ。
 とはいえ、ミステリー色はかなり薄れて、ジャズ奇譚集といった趣きになっています。音楽の素晴らしさと人間の面白さが、強烈な印象で迫る、寓話のような、説話のような小説群です。それを裏打ちしているのは、作者のジャズへの情熱と該博な知識。
 作中で永見が、ニューヨーク、シカゴ、ニューオリンズを訪れ、その街の音楽シーンに密着した事件と出会うのも読みどころです。