名短篇、さらにあり

 北村薫宮部みゆき編によるアンソロジー第二弾。前作の『名短篇、ここにあり』よりも、さらに渋い作者が並んでいます。なにしろ全員故人ですから。
 作者は、舟橋聖一永井龍男林芙美子久生十蘭、十和田操、川口松太郎吉屋信子内田百けん岡本かの子、岩野泡鳴、島崎藤村。半分以上は名前も知りませんでした。
 案外ポップな舟橋聖一『華燭』、貧しさが染み付いた林芙美子『骨』、吉屋信子『鬼火』、とぼけた味がたまらない(特に父親からの手紙が秀逸)十和田操『押入の中の鏡花先生』、これぞ人情話、川口松太郎『紅梅振袖』、ぞくぞくとする内田百けん『とほぼえ』、職人の悲哀が印象的な岡本かの子岡本一平の妻、岡本太郎の母)『家霊』、本人の気づかない狂気を描いた島崎藤村『ある女の生涯』などが印象深かったです。


名短篇、さらにあり (ちくま文庫)

名短篇、さらにあり (ちくま文庫)