先月のまんがくらぶオリジナル

まんがくらぶオリジナル2011年9月号の感想


『つくねちゃん+30』 ひらふ
 「そこは私の席だ」 伏線たっぷり。タイトル落ち。
 「キミの性格は」 こちらもタイトル落ち。「そこは私の席だ」との対比が鮮やか。


『のぶながちゃん公記』 くりきまる
 二色カラーにふさわしく、充実の海行き回。戦国時代なのに、長閑でみんなかわいいなあ。


『おかあさまといっしょ』 小池恵子
 嫁姑4コマアンソロジーを作ってみたい。『みどりさん』 秋月りす→『おかあさまといっしょ』 小池恵子→『平穏の日常』 佐藤両々→『極楽町一丁目』 二階堂正宏、みたいなやつを。読み進めるほどに、ダークになっていくように。


『ちいちゃんのおしながき繁盛記』 大井昌和
 石神井公園から池袋までは10.5km。往復だからそれだけで21km。小学生女子が自転車で行くのは一仕事。
 64ページのちいちゃんの表情はピカチュウ。スタンプラリーだけに。


『あにメカ』 よしむらなつき
 タイトルバック:『あずまんが大王』より伝わる4コマの伝統美。


『ベルとふたりで』 伊藤黒介
 別荘で肝試し。この作品では、スクリーントーンを使わないようにしているようですが、トーンの助けを借りないで、暗闇や肝試しの雰囲気を出すのは、かなり困難なようです。暗さも怖さもあまり伝わってきません。
 ちょっとトーンを足すだけでも、ずいぶん印象は違ってくると思います。作家のポリシーならば仕方ないですが、作品の出来を第一に考えるべきでは。


『オフィスのざしきわらし』 小坂俊史
 「小学生メソッド」 お呼びがかかるまで、毎日ずっと下に水着で仕事していたのか。なんと迂遠な。プールで2時間も遊ぶのは、かなり体力を使います。仕事していたほうがマシなくらいに。
 「裁判でむしってやる」 この裁判で弁護する弁護士が気の毒になります。
 「どの口が言うか」 オチがタイトルにかかっています。2コマ目と4コマ目の「タマじゃねえ」がリズムに。
 「非の打ちどころがありません」 いしいひさいち先生の漫画で「俺の酒が飲めねえのか」と自家製のダンゴムシ酒を強要するネタがありました。あまり想像したくないです、ダンゴムシ酒。
 「間違えた結果」 考えオチ。エレベータ内にいる黒髪の二人のモブが、気まずい雰囲気を出すために、効果的に機能しています。
 「いつか来る恐怖」 ふつう、オフィスに吹き矢は無い。
 「この夏の流行を」 時事ネタ。本当にひとあじ違うロボット社員。
 「人間社会のおそろしさ」 否川くんのその後よりも、全削除されたデータの復旧作業のほうが恐ろしい。怖いよう。
 「今日もお使い行きますよ」 1本目の段階で、彼女たちの水着姿に気が散るなんて、思いもしなかったです。この二人にはモヤモヤしません。


『ランスカ!』 中島沙穂子
 猛暑の夏は、ランナーにとってはオフシーズン。ランニングシーンは控えめに、将来への布石を打ちます。


『ショート・ヘア』鹿嶋しろう
 Y-1準グランプリ作品。もともとは、ネット上のライブドアY-1グランプリで発表し、雑誌掲載に合わせて描き直したようです。ちなみに、『単発ネタ』→短髪→ショート・ヘアということでしょう。
 現在、デイリー4コマの通常更新が終了してしまったライブドア上での4コマ漫画ですが、雑誌4コマとは違う特徴がいくつかあるようです。


 1. コマが正方形であること
 2. タイトルコマを含めると、コマ数が5コマであること
 3. 1度に表示されるのは1コマのみで、クリックすることで次のコマに進めること
 4. コメント欄や人気投票などがあること


 いずれも雑誌掲載、単行本収録を、あまり前提としていないからこその特徴と言えるでしょう。正方形×5コマは、紙媒体ではレイアウトが困難です。今回の掲載でも、横長のコマへの描き直しが必要でした。


 なお、この作品『ショート・ヘア』には、ネット4コマならではの特徴がいくつか出ているようにも思います。
 ひとつは、ネームが極端に少ないことです。クリックで進むタイプのネット4コマは、紙に印刷された4コマよりも、読むスピードが速くなるように感じます。紙媒体の漫画より、ネームが少なくしたほうが、速く読むのには適しています。
 ネット4コマは、紙面を追う目のリズムではなく、カチッカチッという指先のリズムで読む感じなので、セリフが多いと読み飛ばされてしまうようです。作品の印象としては、漫画と大喜利の中間みたいな感じでしょうか。
 もうひとつの特徴は、アニメーションに近い効果が使われているということです。
 例えば、「つるの恩返し?」の2コマ目と3コマ目は、ネット上ではアニメーションになります。「飽きやすい子の朝顔観察日記」も、ネット上ではパラパラ漫画的に見られたでしょう。他にも、同じポジションの構図が多くみられますが、これはアニメーションで同ポとよばれる技法です。
 もともとネット漫画では、漫画とパラパラ漫画とアニメーションが、シームレスにつながります。恐怖漫画ですが、わかりやすい作例としては、こちらでしょうか。
 その意味で、ネット4コマは、漫画とアニメーション絵コンテの中間のようにも見えます。


 ライブドアデイリー4コマの通常更新停止といった状況下で、これからの問題としては、ネットに特化した作品や作家を、どうやって課金のあるシステムにつなげて、プロとして育てるかということでしょう。雑誌連載などの紙媒体にフィールドを移すのがいいのか、あくまでネット作家としてお金を稼げる道を模索するほうがいいのか。状況は流動的です。